“TOKYO カルチャーの発信源”・渋谷 PARCO に「2nd OUTDOOR」がある理由-前編-
そして 2019 年、日本から世界へとカルチャーを発信するベースステーション、“新生”渋谷 PARCO として完全リニューアル。渋谷・公園通りに物理的&文化的ランドマークが戻ってきたと大きな話題となった。そんな同店の 5F に 2021 年 9 月 10 日に誕生したのが「PARCO OUTDOOR PARK(パルコ アウトドア パーク)」である。現在、フロアの約半分をアウトドアショップが占めるこのエリアの 1 周年を記念し、リユースショップを全国展開する「2nd STREET セカンドストリート」のアウトドア専門店「2nd OUTDOOR セカンドアウトドア」が、期間限定でオープン中。
※2nd OUTDOOR 渋谷PARCO店は、2023年1月31日をもちまして閉店いたしました。
そこで本記事では、PARCO OUTDOOR PARKから貞安 遥さん、2nd OUTDOORからは川口 亮さんというキーマン2人に集まってもらい、【前編】・【後編】の2回に分けて、会話の中から“渋谷PARCOに2nd OUTDOORがある理由とはなにか”を紐解いていく。まず【前編】では、この2人とともに2nd OUTDOOR 渋谷PARCO店を知るところからスタート。
そもそも「2nd OUTDOOR セカンドアウトドア」とは?
-貞安さんは「2nd OUTDOOR」というショップについて、最初どのように感じましたか?
貞安:“2nd OUTDOOR”という名前から得られるイメージだけでは、どういうショップなのか捉えきれていなかったのですが、実際に売り場を拝見して、品揃えやバリエーションの豊富さ、その商品の見せ方など全方位において奥が深い世界だなという印象を受けました。他のリユースショップとの大きな違いでいえば、しっかりした目利きとキュレーション力をすごく感じますし、本当に素敵なショップだなと感じています。
-どういった部分から、よりそれを感じますか?
貞安:ピックしているブランドもそうですし、なによりゾーニングと見せ方の巧みさ。例えば、ランタンのゾーンなら、〈Coleman コールマン〉ばかりを年代順に並べたり、釣りのゾーンでは用途に合わせて、釣り竿を何本も集めたりと、1つのアイテムやジャンルの中でも色んな側面があるということをセレクトとポップなども駆使して伝えているのは、すごいなって。そういったこだわりはショップへの信頼感にも繋がりますしね。モノ自体はもちろん、そこに付随するストーリーに対する売り手側の愛着が、訪れたお客様にもすごく伝わるんじゃないかなと。
川口:ありがとうございます!我われが最初に店舗デザインを考える際にまず、“最新のモノが好きな方”と“古いモノが好きな方”といった感じに、客層を2つに切り分けて考えるところからスタートしました。その上で、店舗にストックしておける在庫量を想定しつつ、コダワリを感じていただけるアイテムを用意する。言葉にすると簡単ですが、実際にやってみると、これがなかなか大変な作業で…(笑)。
貞安:ですよね(笑)。アイテムのセレクトもそうだと思いますが、それ以前に店舗の形状がL字型になっていて、かつ面積にも限りがある。その制限がある中でやっていただいているので、そこは申し訳ありません!
川口:いえいえ(笑)。ただ最初から備え付けで移動できない什器が入っていたので、そこから逆算してジャンルのゾーニングをしていくっていう作業はマストでした。そこで問題となったのが、衣料のゾーンが手前と奥で 2 分割されてしまうという点。その間のスペースをジャンル同士で関連付けながら、どのように自然な動線を作っていく形で埋めていくかは、色々と試行錯誤しましたね。
貞安:通常のアパレルショップとして考えるならば妥当な大きさなんですが、テントやシェラフのような大型商品を展開できるスペースの確保が必要となるアウトドアショップと考えると、やや狭小ですもんね。実際、こうして売り場を拝見していても、相当ギュッと圧縮して商品を並べていただいているのが分かるので、かなり計算して活用していただけたなと。
-そういえば、こちらの渋谷 PARCO 店で取り扱うジャンルは、アウトドアだけではないんですね。
川口:実はそこも含めて、最初は手探り状態でした。PARCO OUTDOOR PARK のコンセプトである“街とフィールドを行き来する都市型アウトドアスタイルの提案”を最初に伺った際に、一般的な方よりも尖ってるというか、よりコダワリの強い方がいらっしゃる場所であると想定し、それに対して、どうアプローチをしていくかを考えた末に生まれたのが、“ヴィンテージ&アウトドア”というコンセプトです。なので、“ヴィンテージ”という部分は 2nd OUTDOOR の共通コンセプトではなく、この渋谷PARCO という場所といらっしゃるお客様に合わせたものなんです。
-そのコンセプトが反映された、アイテムセレクトというワケですね。
川口:それこそ当初、もっとアーバンで都会的な切り口でも一旦進めてはみたんですが、同じフロアにある〈Nordisk ノルディスク〉さんが、既に表現されていたコンセプトと重複する部分もあったため、逆に舵を切ってこの感じになったという経緯もあります。また、先ほど貞安さんにも仰っていただきましたが、“1 点だけではなく選べる”という、お客様に選択肢を与えるというのも、コダワリの部分ではあるのかなと。例えば、マウンテンパーカーを探しに来た際に、何種類か見た上で自分好みの1着へと辿り着く。こういった体験をしていただけるのも、数と種類を揃えているウチだからこそ可能な部分だと思います。
(→渋谷 PARCO 「PARCO OUTDOOR PARK(パルコ アウトドア パーク)」の詳細は、こちら)
(→2nd OUTDOOR の詳細は、こちら)
“知的好奇心を刺激する”
2nd OUTDOOR 渋谷 PARCO 店の面白さ。
-たしかにアウトドアのウェアにしても、服ではなくギア(道具)という感覚が強い人も多いですし、何かと何かを比較して、自分に合ったモノを選び出す場所としては最適解ですよね。とはいえ、先ほどのお話にもありましたが、新品を扱うショップと並んだ際のセレクトに関しては、かなり大変なんじゃないかなと。
川口:なので、実はこの渋谷 PARCO 店では取り扱っていないブランドも、すごくたくさんありまして…。
貞安:そこもご理解の上、“ちょっと”ご調整いただきました(笑)。逆に我われとしては、あれだけのブランドラインアップを店舗という形で揃えるのは非常に難しく、店舗レイアウトと同様に制限がある中でも、多種多様なアイテムを揃えていただき、本当にありがたい限りです。
川口:逆に、この渋谷 PARCO 内に出店されているブランドさんや他ショップさんから、怒られたりクレームはあったりしませんか?こちらとしてもわりと気になっていまして…。
貞安:大丈夫ですよ(笑)。むしろ PARCO 内の他店舗の方々も買い物に訪れているようですし。そういった意味では業界の方々もすごく面白がって、興味を持ってくださっているように感じますね。人伝てにですが、某人気アウトドアブランドを展開されている企業さんも、2nd OUTDOOR の業態を非常に褒めてらっしゃったというのも聞いておりますし。
-アウトドアという枠組みの中で、周囲のショップで扱う最新のアイテムとリユースのアイテムを比較検討できることで、互いに相乗効果もあるということでしょうね。
貞安:そういえば、店舗レイアウトも随所にヴィンテージテイストの装飾がされていたりと、非常に雰囲気がありますが、アイテムごとに付けられた商品ポップなどは、2nd STREET さんの本部で製作されているんですか?
川口:あれは 2nd OUTDOOR 渋谷 PARCO 店だけで展開しているもので、店長の裁量に任せています。店舗を取り仕切る店長の“モノに対する情熱と知識”が反映される、渋谷 PARCO 店ならではのポイントでもあります。
貞安:まさに博物館や美術館にいるようなキュレーター(学芸員)的存在ですね。 我われに“知る楽しさ”を教えてくれるっていう。先ほどストーリーが重要という話もしましたが、そういった知識を共有したり享受するという楽しみ方も古着ならでは。私自身さほどアウトドアギアなどに詳しくないのですが、見ているだけでも面白いんですよね。知識がなくて分からないからこそ、ポップに書かれた商品の解説を読んで「あ、そういうところが違うんだ!」と知ることもできますし、スタッフの方が知識を持っていれば「これはどうやって使うんだろう?」という疑問にも答えることができる。そういったコミュニケーションが活発になされることで、知的好奇心が刺激されるのも楽しいですよね。
-渋谷 PARCO さんというロケーションもあって、ソロだけでなく、ご家族や友人やパートナーと訪れる人も多いと思いますし、そこで一緒に見て楽しむという買い物の仕方はありますよね。「これはどう使うんだろうね?」とか会話も弾むでしょうし。
貞安:そうですね。なので訪れるお客様の性別も年齢も多種多様。“ずっと山登りをしてきたんだろうな”という雰囲気の年配の男性を見かける時もあれば、“アウトドアとは縁遠いけれど、ファッション的なアウトドア・リバイバルの視点で刺さっている”みたいな女性のお客様もいらっしゃいますし、その辺は本当に幅広く受け入れていただけているのを実感しています。
2nd OUTDOOR 渋谷 PARCO 店で見つけた、“I bought なアイテム 3 選”。
-お二人には先ほど売り場から、実際に I bought(購入する)したくなるくらい気になったアイテムを、3点ずつピックしていただきました。それぞれ何故コレを選んだのかという理由を教えてください。
【川口‘s SELECT 01】
〈Patagonia MARS パタゴニア マーズ〉の「R2 PCU Fleece R2 PCU フリース」
川口:Patagonia が米軍に納入していたタクティカルラインでっていうところで、他のリユースショップではなかなかない珍しいモノですし、かつ人気の L サイズと XL サイズ。サイズの選択肢もあるし、2着あればこの記事がアップされる頃にもどちらかは残っているんじゃないかという希望的観測も込めてセレクトしました(笑)。サイズ・状態ともに絶妙でコレは個人的にも 欲しいくらい。
【川口‘s SELECT 02】
〈Columbia コロンビア〉の 80’s ナイロンアノラック
川口:コレに関しては、すみません。もう単純に好みだったので選びました(笑)。80 年代のモノでブラックベースにビビッドな挿し色という配色も良いですし、金額も 1 万円ちょいでメッチャ買いやすいなと。
【川口‘s SELECT 03】
〈Coleman コールマン〉のランタン「200A」
川口:ポップに記されていた店長コメントによると、1964 年 9 月製。バルブノブが、ヴィンテージのアンプやラジオのモノと思われるチキンヘッドノブと交換されているのがポイント。要はデニムのダメージのようなもので、それを加点ポイントするのか、減点ポイントと感じるか、その絶妙なラインもヴィンテージの面白さ。
【貞安‘s SELECT 01】
〈ALITE エーライト〉の「Bison Chair バイソンチェア」
貞安:まず見た目が可愛い!あと座面の色もフレームも綺麗ですし、結構大きくて座り心地もメチャクチャ良かったです。しかも軽いのでアウトドアに持っていくのもイイですし、インテリアとして家に置くのにもバッチリかと。
【貞安‘s SELECT 02】
〈??????〉のコンテナボックス
貞安:こちらもインテリア感覚でセレクトしました。初見では「なにコレ!?」じゃないですか(笑)。古道具市なんかに行けば、こういった商品も見つけられると思うんですが、常設のお店で置いてあって、触れることができるのが面白いなと。
【貞安‘s SELECT 03】
〈THE NORTH FACE ザ・ノース フェイス〉の 70’s ダウンベスト
貞安:これはもう単純に、今期のトレンドアイテムなので。渋谷 PARCO の館内でも色々と見かけていて、去年から欲しいなと 思っていたんですが、コレがまた可愛らしかったので、思わず手に取ってしまいました。下げ札には、70 年代の茶タグと記さ れていました。
以上、【前編】では“2nd OUTDOOR 渋谷 PARCO 店とは、どんなショップなのか”。また“そこでは、どういったアイテムに触れることができるのか”といった部分にフォーカスしてお届けした。続く【後編】では、“そもそも PARCO OUTDOOR PARK になぜ、2nd OUTDOOR が出店したのか”。その根幹部分に迫っていく。
「2nd OUTDOOR 渋谷 PARCO 店」
住所/東京都渋谷区宇田川町 15-1 渋谷 PARCO 5F
電話番号/03-6455-0005
営業時間/11:00〜21:00
※2nd OUTDOOR 渋谷PARCO店は、2023年1月31日をもちまして閉店いたしました。
●プロフィール
右_貞安 遥さん
(株式会社 PARCO 渋谷店 営業課)
渋谷 PARCO 5 階の PARCO OUTDOOR PARK にオープン時から携わり、その魅力をもっとも知る人物。松本 PARCO 勤務時代にハマって以来、そば屋巡りが趣味。
左_川口 亮さん
(2nd STREET 事業部 2nd STREET 商品 1 課 マネージャー)
「2nd OUTDOOR 渋谷 PARCO 店」の立ち上げから関わり、そのコンセプトから商品セレクトまで、もっとも熟知している。最近は『スプラトゥーン 3』にハマっているそう。
Text : TOMMY
Photo: Nobuyuki Kawai