ビームス ヒロシマ ウラ マルシェとセカンドストリートが、 “リユースで繋がった”秋の3日間。
今年10月12日(土)〜14日(月・祝)の3連休、このマルシェに〈2nd STREET セカンドストリート〉が初出店するということで集まる注目、高まる期待。我われ『knowbrand magazine』取材班は、その様子をリポートすべく早速、広島に向かった。
舞台は中国・四国地方最大の都市、広島。
会場はビームス 広島の“ウラ”。
そこで不定期開催されるウラ マルシェとは?
東京駅から約4時間、新幹線に揺られて到着したのは広島駅。住所は広島県広島市。県庁所在地であり、中国・四国地方最多の人口を有する同市には、外国人に人気の観光スポットとして常にトップ3に挙がる2つのユネスコ世界遺産(安芸の宮島/原爆ドーム)があり、日本国外からの観光客が多いことでも有名だ。
また中心部を流れる太田川河口のデルタ地帯には、戦国時代末期に同地を統治していた毛利隆元が築城した広島城が悠然とそびえ、市民の移動の足を担うのは日本最大規模を誇る路面電車の広島電鉄とバス。昭和の時代から変わらぬような風情が旅人のノスタルジーを掻き立てる。
そんな街に1994年オープンしたのが「ビームス 広島」だ。今年で30周年を迎える中国地方の顔的ショップにして、こここそが「ビームス ヒロシマ ウラ マルシェ」の開催地となっている。
SHOP DATA
ビームス 広島
住所:広島県広島市中区本通3-10 本通サザン 1F・2F
営業時間:11:00〜20:00
電話番号:082-544-2961(メンズ)/082-544-2962(ウィメンズ)
ここでビームス ヒロシマ ウラ マルシェとは何なのか?という肝心要の部分に触れたいと思う。
概要を簡単に言い表すならば、“ビームス 広島 スタッフによる、ヒトの繋がりを大事にしたマルシェ”となる。2021年からスタートし今年で4年目。過去85回開催されており、飲食・物販事業者がビームス 広島の“ウラ”で自慢の一品を販売し、それ以外にも店舗30周年と同マルシェの連動企画では、スタッフによるトークイベントやインフルエンサースタッフ来店イベントなども実施してきた。
同マルシェ発足の背景には、コミュニティブランドを目指すビームスが、所属する多様な人材の繋がりから多くの異業種コラボを送り出してきた実態がある。
1976年に東京・原宿で創業したビームスは、これまで数々のプロダクトやコラボレーションなどを通じてムーブメントやコミュニティを創出してきた。その一方で、国内約160を数えるビームス各店舗にも、地域コミュニティのハブとなる店舗スタッフが多く存在し、各地域の店舗を発信拠点としたコミュニティづくりの可能性と、その先にあるこれからのリアル店舗の役割を模索していた。
そこで重要な役割を果たしたのが、ビームス 広島に長年勤務し、同エリアのコミュニティにおいてハブとなっていた江口 裕氏の存在だ。
PROFILE
江口 裕さん「BEAMS 広島」
19歳でアルバイトとしてビームスに入社、広島店でメンズカジュアル担当し、ビームスジャパン宮島POP UPの立ち上げ経験。現在、広島エリアのコミュニティハブとして活動。ウラ マルシェ発起人として土着した店舗を目指し、スタッフと地域の結びつける役割を担う。
広島を地元に育ち、長年築き上げてきた自身のコミュニティを持つ彼もまた「地域コミュニティのハブになるショップとして見れば十分とは言い難い」と感じていた。そんな時に改めて周りを見れば、後輩のスタッフたちにも自分とは異なる仲間やショップとの繋がりがあることに気付く。
こうした背景もあって、自分だけでなく店舗の若手スタッフも活かしたイベントとして提案したのが、ヒロシマ ウラ マルシェというわけだ。
江口氏は、「これまでビームス 広島が提供してきた、ファッションを介在したコミュニケーションを超え、飲食をはじめとした様々な商店の方、そこのファンの方とビームス 広島、ヒロシマ ウラ マルシェを媒介にした有機的な結びつきを作れたら嬉しいですね」と話す。
ビームスヒロシマ ウラ マルシェと
セカンドストリートがコラボって、実際今回ナニするの?
この思いから生まれた新たな“繋がり”。その相手が、全国に850店舗以上、広島県では20店舗(うち広島市に12店舗)を展開し、“捨てない生活”を応援し続けてきたセカンドストリートだった。
SHOP DATA
セカンドストリート広島本通店
住所:広島県広島市中区本通1-14
営業時間:10:00〜21:00
電話番号:082-545-5052
セカンドストリートとビームスは、2021年に東京‧原宿の店舗でコラボレーションイベントを実施するなど、「新品・リユース品の垣根なく、もっと広くファッションの楽しさをお客さまにお伝えしたい」という共通の想いを持っていることから、このコラボレーション「ビームス ヒロシマ ウラ マルシェ × セカンドストリート」は実現したのだ。
今回のウラ マルシェでは、全国約850 店舗のセカンドストリートで取り扱っている数十万点以上の衣料・服飾品の中から、スタイリングに定評のあるビームス 広島の4名のスタッフがキュレーターとして選んだ約400点のリユース衣料‧服飾品が販売される。
ではここで、キュレーターを務めた4人にご登場いただこう。人となりを知るための各人のプロフィールは当然押さえつつ、実際にキュレーションしてみた感想、ピックしたアイテムの中から厳選したオススメ2点の推しポイントについても語ってもらった。
CURATOR 01
藤井伸治さん〈BEAMS〉
PROFILE
「ビームス 広島」ではメンズカジュアル一筋で入社19年目。過去にメンズカジュアルのレーベルすべての勤務経験があり、カジュアル内カテゴリーのオールラウンダーとして活躍している。
キュレーションしてみた感想は?
藤井:今回は、アウトドアとワークにフォーカスしつつ、カジュアルに着ることが出来るアイテムをセレクトしました。特に“色”はかなり意識していて、アウトドアらしいカラーリングのモノを自分で実際に見て触れて探すことが出来たのは良かったですし、すごく楽しい体験でした。セカストさんはオンラインと実店舗を合わせると本当に膨大な数のアイテムを取り扱っていますよね。そこでカテゴリーを限定して探すことで、より“好きでこだわる人に刺さるモノが見つかる”ということが分かったのも大きな収穫でした。
FUJII’s PICK UP 01
〈Patagonia パタゴニア〉のソフトシェルジャケット
藤井:モデル名は「ゼファージャケット」。ストレッチの効いたソフトシェルはミドラーとしても着用されるため、どうしてもタイトなモノが多く見つかりがち。その点こちらはゆったりサイズで着やすく合わせやすくて最高。ゲッコーグリーンの色合いもたまりませんね。
FUJII’s PICK UP 02
〈REI アールイーアイ〉のシェルジャケット
藤井:90年代くらいのアイテムだと思いますが、〈アールイーアイ〉はフリースアイテムこそよく見つかるものの、シェルジャケットの玉数は少ないのでお買い得。そもそも〈アールイーアイ〉を推す古着屋は少ないので、コアなお客様なら反応していただけるのでは?
CURATOR 02
上山幸子さん〈Ray BEAMS〉
キュレーションしてみた感想は?
上山:“キュンと心躍るモノ、パッと目を引いたモノ”を今回のテーマで、デザイン性に注目してアイテムを選びました。商品のピックのためにいくつかの店舗を巡るにあたって、「このブランドも置いてあるんだ!」という驚きもありましたし、ウキウキ気分で店内を何往復もしちゃったりで(笑)。正直自信はかなりあります。全体のお値段は定価に比べるとかなりお手頃とはいえ、アイテムによってはしっかりしたプライスのモノもあるので、手に取りやすいプライスのアイテムと組み合わせて楽しんでいただければと思います。
UEYAMA’s PICK UP 01
〈dahl’ia ダリア〉のブラウス
上山:ストライプ柄のワンピは〈ダリア〉。ビームスのフェニカでも取り扱いのあるブランドだったので、“知っていただきたい”という思いも込めてピックアップしました。お袖がちょっと長めで生地は薄手。コーディネート次第でオールシーズンご着用いただけます。
UEYAMA’s PICK UP 02
〈TOGA × Dickies トーガ × ディッキーズ〉のパンツ
上山:〈トーガ〉は個人的にも好きなブランドです。中でもスタッズがあしらわれているアイテムが数多く見受けられ、そこが推しポイントでもあります。当然、〈ディッキーズ〉とのコラボパンツもポケットにスタッズが配置されていてすごく可愛い。これは買いだと思います。
CURATOR 03
犬飼洋平さん〈BEAMS F〉
PROFILE
ドレス担当。ビームスに入社し、しばらくはカジュアル担当として勤務するも、取り扱う幅広いブランドにも興味を持つようになり、10年程前にドレス担当へコンバートされ、今へと至る。
キュレーションしてみた感想は?
犬飼:すごく面白かったです。店舗ごとに品揃えに特徴があって宝探し感覚もありますし、かつ状態も良いモノが多い。ドレス視点ではボリュームが控えめではありましたが、元々カジュアル担当だったので、モードなども含めてジャンルの幅を広げつつピックアップしました。特に〈バブアー〉は数も揃っていますし、状態も含めてお安く良いモノを提供出来るのではないかなと。今回、僕らがキュレーションすることで、お客様にはファッションの面白さをギュッと詰めた形で見ていただけるんじゃないかなと思っています。
INUKAI’s PICK UP 01
〈Barbour バブアー〉のスポーツジャケット
犬飼:まだスリーワラントだった時代のものです。ウィンドペーンのボヤけた柄の風合いと色合いも良いですし、ややゆったりめシルエットが今の時代にも合っているんじゃないかなと。なによりこの“枯れた感じ”も絶妙なので、サイズが合う方にぜひオススメしたいですね。
INUKAI’s PICK UP 02
〈Joe Casely-Hayford ジョー・ケイスリー・ヘイフォード〉のアノラック
犬飼:学生時代に活躍されていたデザイナーのブランドで、個人的に懐かしいです。素材こそクラシカルなツィードですが、90年代あたりのモダンなデザインで、時を経て今でも着たくなるっていうのがポイント。状態も良いですし、これはちょっと自分で買っちゃうかも(笑)。
(→〈ジョー・ケイスリー・ヘイフォード〉のアイテムをオンラインストアで探す)
CURATOR 04
立石直子さん〈BEAMS BOY〉
キュレーションしてみた感想は?
立石:今は販売していないアイテムとの出会いもあったりして、すごくテンションが上がりました! ひとクセあるアイテムが好きなので、ユニセックスで使えるストリートブランドや1着でもサマになる派手めのデザイン、柄モノなど、デザイン性に富んだアイテムを中心に選んでいます。今回、商品ピックにあたり、オンラインだけでなく実店舗も回りましたが、とても状態良好のモノが多い印象。コンディションを気にして“古着は若い人が着るモノ”とお考えのお客様にも気にせず手に取っていただきやすいと感じました。
TATEISHI’s PICK UP 01
〈beautiful peopleビューティフルピープル〉のライダースジャケット
立石:以前、ビームスでもお取り扱いしていて、お客様から非常に好評をいただいていたライダースジャケットを発見!このコンパクトなシルエット、流行り廃りのないデザイン、そしてリアルレザーでありながらもお求めやすいプライス。三拍子揃っていてオススメです。
(→〈ビューティフルピープル〉のアイテムをオンラインストアで探す)
TATEISHI’s PICK UP 02
〈Coperni コペルニ〉のワンピース
立石:セカンドスキン的なトップスが好きで数年前から様々なブランドを試してきた中で、よく愛用しているのがこちらのブランド。なので即チョイス(笑)。丈がやや長めでストンと着ても、ボトムスにインしていただいても良いですし、このピンクが可愛いくないですか?
さて、四者四様のキュレーションについても分かったところで、続いては会場設営に移る。場所はもちろん“ビームス 広島のウラ”。この何もないスペースがどのような姿に変わるのか、要注目だ。
ビームスヒロシマ ウラ マルシェ×セカストで生まれるケミストリー
新たな出会いと思いがけない発見がそこかしこ
ビームスのコーポレートカラーでもあるオレンジ色のテントを設置したら下準備は完了。あとはキュレーター4名がセカンドストリートの実店舗&オンラインからセレクトしたリユース品を、ラックや平台に並べていくだけ。
それぞれビームス歴も長いだけあって、黙々と作業しながらも訪れる人々をワクワクさせるような魅力的な売り場が出来上がっていく。
ウッド&スチールで作られた雰囲気の良いサインボードも設置完了し、準備は万端。その時々の出店者と内容によって会場レイアウトが変わるので、いつ訪れても新鮮な印象を受ける。
今回は犬飼氏のドレス&セミカジュアル、藤井氏のワーク&アウトドアで売り場を分けつつ、女性陣は上島氏、立石氏のアイテムをミックスして陳列。それぞれの間にバッグやシューズ、帽子類などの小物を置くことで、シームレスに全体を見て歩けるよう工夫されていたのが印象的。このあたりの経験値はさすが、日本を代表するセレクトショップ、ビームスである。
こうして午前11時、無事初日のオープンを迎えた「ビームス ヒロシマ ウラ マルシェ × セカンドストリート」。事前告知をチェックしていたのか、ウラ マルシェ開催の報を聞きつけた人々が徐々に集まり始める。会場にはキュレーターを務めた4名も立ち、交代で来訪者を接客する。
プロの知識と間違いないセンスで自らが選んだアイテムをお客さんに提供する。普段の売り場での接客とはまた違ってバイヤー的目線も加わるため、より客観的に、されど思い入れたっぷりに推しアイテムたちをプレゼンする4名。
また、先述のようにシームレスに各ジャンルのアイテムを見て回ることが出来るため、これまで手に取ることがなかったアイテムの前で足を止めて、挑戦したことのなかったような組み合わせや、ビームスで購入したばかりのアイテムとのマッチングを考える楽しみも。
しかもそこには、セレクトショップならではのアンテナの高さが反映されているので、自然とトレンドが取り入れられ、かつどのアイテムを選んでも間違いない。中には、以前ビームスの店頭で見かけて悩みつつもスルーしたようなアイテムだって見つかったりする。この思いがけない出会いもまた、リスースならではの強みであり魅力だ。
また会場に並ぶアイテムは、お客さんだけでなくビームス 広島 スタッフも購入可能。なので「お目当てのアイテムがいつまで残っているか分からないので」と、休日なのに買い物に訪れるスタッフの姿もチラホラ。お客さんだけでなく主宰している側も楽しめる。祭りとはかくあるべし。この事実をもって「本コラボマルシェは成功だった」と断言しても差し支えないだろう。
今回のウラ マルシェにも多くの方が訪れ、ビームス 広島のフィルターを通してセカストのラインアップから厳選された、約400点にも及ぶリユース品との出会いを楽しむ様子が見られた。また同時に、リユースを通じて生まれる“新たな繋がり”の萌芽が確認出来た3日間でもあった。最後は、本イベントのキーマンである江口氏へのインタビューで本稿を締めさせて頂くとしよう。
―このビームス 広島のあるエリアは、セカンドストリート 本通り店をはじめ色々なショップがあって、とても活気があるように感じました。
江口:すぐ近くにある並木通りが元々、古着屋やアパレルショップが集まっているエリアで、その奥にある地蔵通りは割とコアなショップがあって、以前は中国地方のファッションのメッカという感じでしたが、今は随分変わってきていて。流れが広島駅の方に移り始めているとも聞きますし、リニューアル中の駅ビルが開業したら、またちょっと変わるんじゃないかと思っています。
―なるほど。広島の街全体を見渡した際に、ファッションシーンの変化は感じますか?
江口:ひと昔前と比べれば、学生さんが少ないのでちょっと勢いはないかなとは感じますが、古着のカルチャー自体は昔から根付いている土地柄だと言えます。あとスケーターでも第一線で活躍している子が多いので、その辺のコアな部分は変わらずといいますか。ショップ同士も横の繋がりが強いのがこの街の特徴でしょうね。
―新品を扱うビームス 広島の真裏に、セカストのリユース品が並ぶ光景をご覧になった感想を教えてください。
江口:いやぁ、濃いし見ているだけで面白いですね。キュレーションを担当した4名それぞれの色がしっかり出ている分、偏りも結構あるように思いつつ(笑)。お客さまへ提案する僕ら側としても、今旬で話題になっているようなアイテムがジャンル関係なく一堂に介しているというのは、すごくアリだなって。僕はキュレーターとしてではなくマルシェの主宰・運営側なので、単純に「面白いな」という目線で見ていますが、アイテムのピックに奔走してくれたキュレーターの4人、会場にいらっしゃってくださったお客様、みんな楽しそうで何よりです。
―このコラボは、定期的に行われるなんてことも?
江口:スタッフの中でも、「次は自分もキュレーターをやってみたい」と思った子もいるでしょうし、ウラ マルシェとしてはいつでもウェルカムなので、またぜひこういったコラボレーションが出来ればと思っています。ありがとうございました!
Text : TOMMY
Photo: Sara Hashimoto