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ワールドクラス・ジャパン “セカイに誇るニッポンのモノ” 〈ブリーフィング〉アーバン・ミルスペックが開く新次元【前編】

相も変わらず、落ち着きのない新しい日常が続く。憎きCOVID-19が進化をやめず、肉体の往来を制限する半面、精神の右往左往を余儀なくするからだ。夜明けは残念ながら、いまだにはるか彼方なのかもしれない。

それでも、下を向いてばかりはいられない。いつの日か再び踏み出す力強い一歩のために、新しいバッグを備えておこう。フィールドを問わず活躍し、屈強でスタイリッシュ。そんな相棒をこれからの自分に重ね、明るい未来を想像するのも悪くないはずだ。

さて今回は、好評企画〈ワールドクラス・ジャパン “セカイに誇るニッポンのモノ”〉の最新章。特異な手法でミリタリーを再構築し続ける〈BRIEFING ブリーフィング〉について、前後半2回にわたってお楽しみいただこう。

米国的でありながら日本的。
絶妙なバランスで構築する
ネオ・ミリタリズム。

 いきなりで恐縮だが、「ニッポンのモノ」という表現に首をかしげたくなるかもしれない。〈BRIEFING ブリーフィング〉といえばミルスペック、そしてメイド・イン・U.S.A.を思い浮かべるはずだ。しかしながら、実はまごうことなき日本のラゲッジメーカーが企画・販売を手掛けているのである。ゆえにブリーフィングは特別な「ニッポンのモノ」で間違いないのだが、まずはその辺りから紐解いていきたい。

誕生は1998年。株式会社セルツリミテッド(現・株式会社ユニオンゲートグループ)の代表を務める中川有司が企画し、同社の小雀新秀がデザイナーに就いた。考え方のベースとなるミルスペックは、正式には「MILITARY SPECIFICATION ミリタリー スペシフィケーション」と呼ばれる軍需品調達を潤滑にするための米国防省による標準化文書。その厳密な規格に則り、ミリタリズムが持つ究極の機能美をアイテムに落とし込もうという狙いだ。

そんなアイデア自体は、決して珍しいものではない。トレンチコートやチノパンを例に挙げるまでもなく、古くからファッションとミリタリーは強固な蜜月を築いている。ではなぜ、ブリーフィングのバッグがスペシャルなのか。その答えとなるのが、米国的かつ日本的という魅惑のアンビバレンスにある。

レッドカラーで入れられたおなじみのタグ。ブランドネームの下には、メイド・イン・U.S.Aの文字が。

前述の通り、基本的にはミルスペックの“本場”アメリカにてアイテムが製造される(一部例外あり)。しかもそれだけに飽き足らず、実際に米軍や警察などへ納めるための専用品を作る工場に依頼。ゆえに、耐久性をはじめとするタフネスや武骨な存在感は、リアルなミリタリーアイテムに引けを取らない。

製造場所だけでなく、素材もミルスペックに準拠している。防弾チョッキやガンケースにも使用される1050デニールの「バリスティックナイロン」や、ナイロンの7倍の耐久性を持つといわれるデュポン社の「コーデュラナイロン」がその代表格だ。ブリーフィングの米国的魅力はいわば、ご当地食材を使って現地のキッチンで作られる本場の味である。

バリスティックナイロンをはじめ、頑強な素材を使うのもブリーフィングの強みだ。

そしてそこに加えられるのが、実に日本的なスパイスだ。ブリーフィングは公言する。「デザインソースは“ミリタリー”のままであってはならない」と。アメリカが作る本物を単に模倣するだけなく、細部まで厳しく見極めたうえで本質を理解し、いかにタウンユースを実現するか。それこそがブランドの宿願であり、その領域において日本人の持つ繊細さが功を奏した。

その証左となるのは、程よいサイズ感などの全体的バランスだけはない。頑強な証しでありながらミニマルな装飾を担うウェビングテープや、そこに配された視認性とデザイン性に優れるレッドラインといったディテールもまた、日本的美意識を印象付ける。付け加えるなら、ブランドの本格展開前に〈UNITED ARROWS ユナイテッドアローズ〉で試験販売されたという実績も、画期的なアーバン・ミルスペックにふさわしい幕開けだ。

ちなみに、現在では日本のビジネスパーソンにも受け入れられるほどタウンユースが根付いたブリーフィングにおいて、初期のユニークなエピソードがある。戦場でも耐え抜くほど強固なモノづくりを掲げながら、なんと一般のユーザーから修理依頼のクレームが寄せられた。そこでアメリカの工場に掛け合ったところ、「どう使えばこんなふうに壊れるんだ!?」と驚かれたそうだ。当然、部品や縫製面の不備はなく、当時の仕様では耐え切れぬほど日本の通勤・労働事情が過酷だったと判断。仕様を変えた今では同様のトラブルがなくなったようだが、思わぬところからのアドバイスによりブリーフィングのバッグはミルスペック以上のタフネスを手にした、との見方もできよう。

「NEO B4 LINER ネオB4ライナー」
ビズシーンにも映える
アシンメトリーフェイス。

ここからは、ブランドが誇る代表作をご覧いただく。とその前に、以降のアイテムはあえてオールブラックで統一したが、その理由について説明しておこう。

というのもブリーフィングは創設当初、ミリタリーを軸足に置きながらブラック主体のコレクションを展開。カーキやカモフラージュ柄といった、“王道”のバリエーションを除外した。その背景には、日本のメーカーがアメリカの工場に発注をかける際のロット数制限がある。常時在庫以外の色を使う計算が立たず、結果としてブラックに特化したラインアップとなったのだ。果たして都会的なイメージのある黒は、以降もブリーフィングのイメージカラーに。アイコニックな赤との対比は、ピンチをチャンスに変えた幸運の配色とも言うべきだろうか。

ロングセラーのブリーフケース「NEO B4 LINER ネオB4ライナー」。高さ31cm、横46cm、マチ12cm。

閑話休題。こちらの「NEO B4 LINER ネオB4ライナー」は、今なおアップデートが掛けられる定番のブリーフケース。ミリタリズムをビジネスユースに落とし込んだ傑作だが、最大の個性はフロントのアシンメトリーフェイスに見受けられる。といってもデザイン的に奇を衒ったわけではなく、各ポケットは使い勝手の良い配置と大きさを確保。この匙加減が心憎い。

アシンメトリーに配置された外側のポケットだけでなく、オーガナイザーポケットを装備をした内側もみどころ。

機能的な強みは外側だけでなく、バッグ内部にも充満する。利便性の高いオーガナイザーポケットやノートPC を保護するクッションが設けられ、B4サイズの書類や封筒を曲げずに収められるサイズ感も心強い限り。企業戦士という言葉は死後になって久しいが、まさに戦士を支えうる重要装備に違いない。

「NEO TRINITY LINER
ネオトリニティライナー」
スタイリッシュに持ち運べる3-WAYタイプ。

 よりコンパクトに、スタイリッシュに。そういったモダンな側面から「ネオB4ライナー」をブラッシュアップしたのが、「NEO TRINITY LINER ネオトリニティライナー」だ。公共交通機関においても持ち運びがしやすいブリーフケースは、ショルダータイプやリュックにもトランスフォーム。万能の3-WAY体制でユーザーをサポートする。

3-WAYで使える「NEO B4 LINER ネオB4ライナー」。高さ28cm、横41cm、マチ12cm。

小型化したとはいえ、当然ながらスペック面には妥協なし。アシンメトリーを織り成すフロントポケットの内部にスリットを設け、縦持ち・横持ちのいずれの場合でも物が出し入れしやすい設計に。リュック用のショルダーストラップはバッグの背面に収納可能で、すっきりとした品のいいビジュアルを損なわない。

格納できるショルダーストラップ、スーツケースに通せるバックルなど細部にまでこだわりが。大きく開くメインポケットも便利だ。

大きく180度開くメインポケット内部には、クッション付きのノートPC収納スペースをはじめ、複数のポケットを備えている。また、バッグ背面にはスーツケースのハンドルに通せるバックルが付属。頼れる3-WAYバッグは、リモートワークやワーケーションといった新しい働き方にも鮮やかに対応するのだ。

「C-3 LINER C-3 ライナー」
ミニマルデザインで立証する機能美。

続いても、3-WAYで使えるマルチプレーヤーをご紹介。「C-3 LINER C-3 ライナー」は、先の「ネオB4ライナー」をさらに薄く仕上げたミニマルデザインを特長とする。アシンメトリーではなく、3つの大きなフロントポケットを規則正しく配置。そのポケットのマチを省いてフラット化することで、一層引き締まったルックスを手にした。

「C-3 LINER C‐3 ライナー」は、さらなるフラット化を実現。高さ31cm、横46cm、マチ10cm。

収納スペースは狭まったものの、モバイル機器などの携帯には十分な容量を確保。ノートPCをメインウエポンとする現代的ビジネスパーソンであれば、その恩恵は語るに及ばないだろう。リュックとして使用する際も周囲の邪魔にならない薄型デザインは、仕事のできる人物像を文字通り背中で語ってくれる。

マチが狭まったものの、収納力十分。クッション付きのため、ノートPCを持ち運ぶ際も安心。

メイン収納部も「ネオB4ライナー」同様、ラウンドジップで180度フルオープン可能。縦持ちと横持ちのいずれの場合でも中身にアクセスしやすいユーザビリティもまた、前身から続く強みである。

「PROTECTION TOTE
プロテクショントート」
記念碑的なファーストモデルが
堂々リバイバル。

タウンユース=ビジネスユースにあらず。その証明となるのが、オフシーンでも使いやすいトートタイプだ。なかでもこの「PROTECTION TOTE プロテクショントート」は、ブリーフィングのコレクションモデル第1号という記念碑的作品。現在では、ブランドを象徴する過去作を復刻させる「ARVCHIVE SERIES」の第1弾としてリバイブを果たした。

コレクションモデル第1号を復刻した「PROTECTION TOTE プロテクショントート」は、オン・オフ問わず使いやすいトートタイプ。高さ35cm、横35cm、マチ15cm。

最初期のプロダクトにおいても、ブリーフィングの信頼性は抜群だ。それを裏付けるのが、シンプルながら必要十分の機能美と、素材に用いたご存知バリスティックナイロン。ブランドが使用するなかでもっともヘビーなマテリアルは高い耐久性と耐摩耗性を備え、時代の波に揉まれてもタフネスを失わない。

ウレタンパットが外部の衝撃をガードし、内部に入れた書類も綺麗なまま持ち運べる。

モデル名が表すように、バッグ前面と背面に組み込まれたウレタンパットもポイント。ノートPCやタブレットを保護するだけでなく、内部の書類やノートが曲がったりシワになったりするのを防いでくれる。また、バッグの両サイドにもひと工夫が。上部が開いた防水構造で、とっさに取り出したい折り畳み傘やペットボトルの収納に最適だ。

「GYM WIRE ジムワイヤー」
スポーティに進化したマルチトート。

メイン収納部の上部にもマチがついたこちらは、トート&ショルダーのふた通りで楽しめる「GYM WIRE ジムワイヤー」だ。ブランドコンセプトのひとつでもある「SPORTS」をテーマにした作品で、さまざまなアクティブシーンへの高い適応力を誇っている。

スポーツをテーマとする「GYM WIRE ジムワイヤー」は、メインポケット上部のマチ幅が調整可能。高さ32cm、横46cm、マチ18cm。

メインポケットは大容量のうえ、上部のスナップボタンを閉じればマチがなくなりすっきりとしたシルエットに。荷物量によって、バッグの形自体を調整できる仕組みだ。また、バッグ下部の左サイドには別途収納スペースを完備。例えば、メインポケットに運動後の着替えを入れ、サイドのスペースにはシューズを入れるなど、汚れや濡れを気にせず荷物を携帯できる。

収納力抜群のメインポケットとは別に、ユーティリティスペースを確保。それぞれ導線が異なるため、汚れや混入の恐れがない。

持ち前の黒いバリスティックナイロンを纏ったルックスもなるほどスポーティで、街でのヘビーユースを促進。ただ、今回紹介したものと同デザインのジムワイヤーはすでに廃盤となり、現在はアップデート版の「CLOUD GYM WIRE クラウドジムワイヤー」がラインナップしている。オリジナルのジムワイヤーを手にしたい方は、ぜひともリユースショップに足を運んでほしい。

「NEO STEALTH HELMET BAG
ネオステルスヘルメットバッグ」
リユースマーケットで探りたい、
米軍由来の傑作。

前編ラストを飾るのは、米軍由来のヘルメットバッグをアレンジした名作。ただしこの「NEO STEALTH HELMET BAG ネオステルスヘルメットバッグ」も生憎ディスコンのため、リユースマーケットでのクルージングをオススメしたい。

「NEO STEALTH HELMET BAG ネオステルスヘルメットバッグ」は現行品としては存在せず、希少価値が高い。高さ45cm、横44cm、マチ5cm。

その名のごとくヘルメットを携帯できるほどメイン容量はたっぷりで、フロントには左右の立体ポケットを含む3つの収納が並ぶ。それらのジッパーを斜めにすることでモノの取り出しを容易にしている点も白眉だ。なお、背面にはB4サイズの書類が入る大型ポケットが控えている。

デザイン的なアクセントになるフロントポケットは、斜めのジッパーが優れた機能性も保証。

メイン収納内部に設けられた大小9個のオーガナイザーポケットも、ブリーフィングらしい機能美を代弁。大きなものから小さなものまで。それぞれを最適な場所に収納できる快感は、使い勝手の良さとはまた別の次元で気分を盛り上げてくれるだろう。

大容量のメイン収納。ヘルメット級にかさばる荷物でも軽々持ち運べる。

ちなみに、今作は手持ちとショルダーの2-WAYタイプ。ショルダーストラップは取り外し可能で、手持ちでの携帯をよりスマートに演出する。

ここまでで、ざっと6型。戦場を耐え抜くハイスペックを日常使いのデザインへと昇華させたバッグは、そのすべてが機能美をもって訴えかける。心の芯に強さを保ちつつも、環境に合わせて進化しようと。アーバン・ミルスペックが開拓した新次元は、なにかと厳しい状況下に置かれがちな我々にとって希望の光となるかもしれない。

続く後編ではバックパックタイプを中心にご紹介。備えよ、常に。

(→【後編】につづく

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