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ワールドクラス・ジャパン “セカイに誇るニッポンのモノ” 〈ブリーフィング〉 “備えあれば嬉しいな”のエクストラ【後編】

世界を相手に勝負できるジャパニーズブランドをフィーチャーする好評企画〈ワールドクラス・ジャパン “セカイに誇るニッポンのモノ”〉。全2回に渡ってお送りする今回のテーマは、“日本発・U.S.A.メイド”という特異な出自のラゲッジレーベル〈BRIEFING ブリーフィング〉についてのエトセトラ。

しかも、アメリカが作る本物を単に模倣するだけでなく、細部まで厳しく見極めたうえで本質を理解し、いかにタウンユースを実現するか。この課題に真摯に向き合った結果、仕様はミリタリーファクトリー製造の泣く子も黙るミルスペック準拠。そこに日本的感性というスパイスをひと振り。こうして生み出されるプロダクトは、ビジネスからタウンユースまで幅広く活用できる使い勝手と秀逸なデザインで多くの人々に熱く支持され続ける、まさにエクストラ。

【前編】では、ブリーフィングの代名詞として知られるブリーフケースやファ-ストコレクションでもあったトートバッグなどを紹介したが、続くこの【後編】では、よりカジュアルなシーンで活躍できるバッグにエイム(照準を合わせる)。知識がレイム(不十分)じゃ モノホンプレイヤーになれねえ。いざSiri語らん。

「TROOPER トルーパー」
あえての無駄を楽しむ
タフネスリュック。

まずは、カジュアルバッグの王道ともいえるリュック・バックパックに着目。【前編】でも述べたが、ミルスペックというタフなワードを主題に据えながら、「デザインソースは“ミリタリー”のままであってはならない」と公言するブリーフィング。問われるのは、ミリタリーギアの本質にある機能美を、どう必要最小限の機能として再構築するか。その最適解の1つが「TROOPER トルーパー」である。

豊富なポケットが特長の「TROOPER トルーパー」。高さ48cm、横38cm、マチ16cm。

登場は2008年。同ブランドのリュック・バックパックシリーズの中でも、最もミリタリー然としたルックスは、着想元が「アタックザック」と呼ばれる登山用バックパックや、1970年代初頭から現在までアメリカ軍が採用しているミリタリーバックパックの名作「アリスパック」というから、さもありなん。両サイドの縦型ポケットとフロントのオーガナイザーポケット、さらにトップリッド(上蓋)にも小物用ポケットを装備するなど、極めて高い収納力と安定のバリスティックナイロン生地が“備えあれば嬉しいな”を標榜するオーバースペック信者の心もくすぐる。

もちろん、肝心要は背負い心地。幅広でカービングしたショルダーストラップの安定感と背面メッシュパッドの柔らかなフィットが相まったそれは、タフにして繊細。あぁ、さすがの気遣い。反面、使い勝手はシンプルで荷物を“放り込む”という表現が相応しい。必要最小限を是とする現代に、無駄な動作を必要とするジレンマも、しばし付き合う内に心地良さへと変わる。

メインコンパートメントを使用する際は、トップリッドを跳ね上げてドローコードを緩める必要がある。このクラシカルで無駄とも言える動作がまた愛おしい。

のちに惜しまれつつも廃番となるが、2020年にブランドを象徴する名作を限定復刻する「ARVCHIVE SERIES」に選出され、「NEO TROOPER ネオトルーパー」として復活。オリジンのデザイン要素を忠実に抽出・踏襲しつつ、現在のライフスタイルに合わせてサイズダウンするなどのアップデートが施され、再びファッション、ビズシーンの最前線へと送り出された。

「NEO FORCE ネオフォース」
ミリタリー×アウトドアの
現代的佇まい。

 バッグの本懐は、荷物の収納にあり。その上で、タウンユースでの機能性の追求したのが「NEO FORCE ネオフォース」だ。ブリーフィングのラインアップ中、唯一のデイパックとして高評価を得ていた「FORCE フォース」のリニューアルバージョンとして誕生。〈GREGORY グレゴリー〉の「DAY PACK デイパック」に代表されるティアドロップタイプは、荷物が収納しやすく荷重も左右に分散されるため背負い心地抜群。思わず頬伝う感動の涙……とは若干言い過ぎか。

ティアドロップ型で収納力に優れた「NEO FORCE ネオフォース」。高さ50cm、横37cm、マチ24cm。

次に細部に触れていこう。コンパクトだった「フォース」を一回りサイズアップするも、先述の「トルーパー」に並べれば、やや細身。漆黒のバリスティックナイロンに浮かび上がる現代的表情。加えてフロントのジップポケット、バッグ下部のピッケルホルダーで70年代から綿々と続くトラディショナルなアウトドアテイストも注入。エアメッシュ仕様で蒸れ知らずの背面パッドは、クッション性も十分。人間工学に基づきカービングしたショルダーストラップが重量感を軽減し、もたらされるは心地良き使用感。

ボディ前面に配置されたポケットは、必要十分な収納力はもちろん、優れた利便性を発揮してくれるだろう。

ガバッと大きく開けば広がる、大容量メイン収納部。荷物が増えても、外貌そのものが変わらないのは計算された設計の賜物。

続いて、収納力にも忘れずフォーカス。アクセスしやすく利便性に優れたフロントのジップポケットのみならず、内部背面側にも大容量ポケットを装備。実際の積載容量に比べてスマートな印象を与えるのは、計算された設計の賜物か。主室は必要なアレコレを納めてなお余りある大容量オープンスペースで、ジッパーの開口域も広くユーズフル。荷物をパンパンに詰めるも良し、逆に荷物少なめでクタっと背負うも良しのリャンメン(両面)待ちと、シーンに合わせた持ち方ができるのも有難い。

「ATTACK PACK アタックパック」
コンパクトなのに大容量という
アンチノミー。

さらにサイズダウンを進めることで、デイリーユースに適者生存した「ATTACK PACK アタックパック」を知らずに、ブリーフィングを語るのはモグリと言わざるを得ない。このファンなら誰もが周知のデイパックの代表作を、一言で表すなら「可愛い顔して、意外に立派なモノをお持ちで」なんてノリで“見た目はコンパクトなのに大容量”というアンチノミーの体現者。

デイパックの代表作が「ATTACK PACK アタックパック」。高さ45cm、横30㎝、マチ13cm。

なんて難しそうな言葉を使うも、ルックス自体はシンプルでいたって普通。これは“トレンドに流されない普遍性を備えている”と言い換えることも可能だが、それだけで代表作と呼ばれていると考えるのは早計。“モノ好き”が心惹かれるポイントは、前述のようにハイスペックな収納力と取り回しの良さにあり。フロントに大きさの異なる2つのアウトポケットを並べ、サイドにはドリンクポケット。失くしがちな小物から、ペットボトルや水筒に折り畳み傘etc…、デイリーライフの必需品を収納するのに持ってこい。要は、丁度よい大きさ・丁度よい位置にあるポケットの恩恵で、痒い所にまで手がリーチ。

「過不足なく」なんてレベルを遥かに超えた内部収納は、デイリーユースには十分すぎるほど。

その効果範囲はメインコンパートメントにも及び、大小のポケットを内蔵し、外から見えない部分まで手抜かりなし。裏側にこそこだわる日本的な粋も感じられる。また、スマートなデザインはスーツ姿にも馴染み良く、プライベートは当然ながら、ビズシーンでも頼れるパートナーになってくれるに違いない。ここまで知れば、物欲がムクムクと鎌首をもたげてくるのも止むを得ず。しかも本作は今も展開中。ビギナーはまずココから始めてみては。

「SIMPLE FLAP シンプルフラップ」
ネオ・ミリタリズムを
ミニマルな姿で表現。

先だって触れた「デザインソースは“ミリタリー”のままであってはならない」というブリーフィング独自のネオ・ミリタリズムを象徴するのが、トップリッドを備えたフラップタイプであろう。ここで紹介する「SIMPLE FLAP シンプルフラップ」は、「トルーパー」の武骨なDNAを継承ながらも、よりミニマル&コンパクトなスタイルに落とし込むことで人気を博した佳作だ。

武骨さとミニマルが融合した「SIMPLE FLAP シンプルフラップ」。高さ42cm、横32cm、マチ14cm。

豊富なアウトポケットなど、男心をくすぐるオーバースペック要素はグッと抑えているが、世間一般のミニマルとは一味違うのだから、ブリーフィングは油断ならない。トップリッドとフロントに扱いやすいサイズのジップポケット、サイドには左右で深さの違うポケットを配備。メイン収納部もA4サイズの書類やPC・タブレットが収まる十分な広さを確保し、さらに本体サイドのジップを開けば、ダイレクトに中へのアクセスが可能な親切設計。これまた至れり尽くせりのオモテナシ。

コンパクトながら立体的に設計されているため、見た目以上に優れた収納力を発揮する。

かように収納力に関しては申し分ないのだが、せっかくの機会なので、ブリーフィングならではの拡張性についても触れておこう。

「PP5 ピーピー5」
機能拡張を叶えるオプションパーツ。

 同社プロダクトの共通項となっているのが、バリスティックナイロンやコーデュラナイロンといった屈強なマテリアルと、アイコンでもあるレッドラインを走らせた「ウェビングテープ」が織りなす絶妙なコンビネーション。ミリタリズムを表現する装飾的役割を担うこのディテールは、ただの飾りではない。別売りのアクセサリーを装着することで、デザイン面・機能面の両方向から自分好みのカスタマイズを叶えてくれるのだ。試しに「シンプルフラップ」のサイドのウェビングテープに「ピーピー5」を装着してみよう。

バッグ本体に外付けすることで機能を拡張する「PP5 ピーピー5」。高さ19cm、横10cm、マチ4cm。

本体サイドのウェビングテープに装着した様子。収納力は当然ながら、ルックスの満足度もストップ高。

一気にミリタリーテイストの先祖返りが起こり、際立つタフネス。スマートフォンやデジカメなどの収納に便利なアクセサリーケースを装着すれば、使い勝手も二階級特進。なにより自分だけのカスタムが楽しめるという点が、“モノ好き”にはたまらないのだ。

「LANCE2 ランス2」
街で真価を発揮する
高機能型メッセンジャー。

コロナ禍で急増したサイクリストたちだけでなく、両手が自由になるワンショルダーの軽快さから、ファッションシーンにおいても復活の兆しを見せているメッセンジャーバッグ。現在は廃番となってしまっているが、意外なことにブリーフィングでもラインナップされていた。それがこの「LANCE2 ランス2」だ。

メッセンジャーバッグといえば「LANCE2 ランス2」。高さ32cm、横42cm、マチ15cm。

荷物を仕分けて収納できるメインコンパートメントに加え、10カ所にも及ぶ大小様々なポケットが、収納力と機能性を高次元で融合。特にサイドのベルクロ式ポケットは、スマートフォンやカメラといった使用頻度の高いガジェットの収納に最適だ。背面に設えたベルクロ開閉式のポケットも、A4サイズの書類などがすっぽり収まるため、ビズシーンにも難なく対応する。長さ調節が可能なショルダーストラップとボディストラップを併用することで装着時の安定感が増し、アクティブシーンにおける活躍も約束されたようなもの。

豊富なポケットのバリエーションは、そのままバッグ自体の機能性にも直結する重要ポイント。

ショルダーストラップと下部のボディストラップを使うことで、装着時使用時のブレが軽減される。

専業ブランドの手掛けるメッセンジャーバッグは、細かな仕切りなどのないシンプルな作りのモノが多く、収納力と街使いでの機能性を同レベルで求めるユーザーからは、物足りなく感じるという声も聞く。そんな人にこそオススメしたいのだが、ご多分に漏れずこちらもディスコン(廃番)。気になる人は、ぜひともリユースショップに足を運んで、お探しあれ。

「DAY TRIPPER デイトリッパー」
日帰り旅に連れて行きたい
定番ショルダー。

ここまで入手困難なディスコンモデルばかりを紹介してきたせいで、盛り上がった物欲のやり場に困っている読者諸氏のために、ラストは入手可能なモデルで締めさせていただくとしよう。モデル名は「DAY TRIPPER デイトリッパー」。カジュアルラインの代表格ともいえる定番ショルダーバッグで、これまで紹介してきたモノに比べると、随分とコンパクトなボディが特徴。

ショルダータイプの「DAY TRIPPER デイトリッパー」。高さ33cm、横23cm、マチ14cm。

とはいえ、使用頻度の高いアイテムの出し入れが容易なアウトポケットに加え、主室内にもペンや小物などが機能的に収納できるオーガナイザーを配置しているので、利便性には太鼓判を押せる。加えて、丸みを帯びたデザイン、耐久性としなやかさを備えたバリスティックナイロン生地、厚みを持たせたマチ幅。これら3つの要素が絶妙なバランスで噛み合うことで、驚くほどの収納力を発揮。

見た目はコンパクトながら、広めにマチ幅を設定しているので驚きの収納力。

“日帰り旅行者”を意味するモデル名が示唆するように、デザイン性と機能性のバランスも丁度良く、ブリーフィングの魅力をカジュアルに楽しむことができる。休日のデイトリップを過ごす際のパートナーとしては、これ以上なく適任かと。

「人の一生というものは重い荷物を背負って遠い道をゆくが如し(人の一生は重い荷物を背負って長い道を行くようなものだ。決して急いではならない)」。かの江戸幕府 初代将軍・徳川家康公の遺訓の一節である。

コロナ禍という長き冬も早3年目となり、ひと時は落ち着きをも取り戻したかに見えた日常。だがそんな仮初めの安寧に弛緩した人々を嘲笑うかのように忍び寄る第6波……。もはや歩むのを諦め、脊髄反射的に自粛を続けている人も多いに違いない。同訓は「不自由を常と思えば不足なし(不自由が当たり前と考えれば、不満は生じない)」と続き、「及ばざるは過ぎたるよりまされり(足りないほうが、やり過ぎてしまっているよりは優れている)」と結ぶが、そこは混迷極める時代に生きる“モノ好き”な我ら。高機能かつミルスペック準拠のタフなバッグがあれば、不自由不満もどこ吹く風。ブリーフィングと過ごす新たな日々に思いを馳せつつ待たれよ、春の訪れ。

いつまで?ホトトギスが鳴くまで。

(→【前編】はこちら

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