“永遠のアメカジ”を知る 不朽の名作〈チャンピオン〉の「リバースウィーブ」とは。 【タグ変遷・プリントの魅力 編】
そう歌ったのは、THE BLUE HEARTSだったか。
時代は移ろい、変わりゆくものなんて、この世に生を受けて数十年も経てば、自ずと気付く必至の理。
人の心もまた同じく、ファッションにおける流行なぞ言わずもがな。
とはいえ“変わらぬモノ・変わらぬ良さ”という概念の存在もまた事実である。
ならばこそ、泡沫(うたかた)の夢の如き、一過性の流行り廃りに右往左往することなく、
いつの時代も愛され、生き残り続ける本当の良品を選ぶのが、賢者の選択。
そこで時代を超えて愛され、時代を経てなお輝きを増す、不変のスタンダード“アメカジ”の出番と相なる。
今回のテーマは、ファッション好きを魅了してやまない“スウェット界の絶対王者”〈Champion チャンピオン〉。その代名詞的プロダクツ「REVERSE WEAVE リバースウィーブ」に焦点を当てて、前・後編の2回に渡って深掘るとしよう。
読者諸氏のような“モノ好き”たちにとっては基礎素養かもしれないが、「見てきた物や聞いた事 いままで覚えた全部 でたらめだったら面白い」なんて言わず、まずはブランドヒストリーをしっかりおさらいするところから。
不朽の名作「リバースウィーブ」は
“とあるクレーム”から生まれた
今や“キング・オブ・スウェットシャツ”とも称される〈Champion チャンピオン〉。
歴史の始まりは1919年。創業者サイモン・フェインブルームが、アメリカ・ニューヨーク州ロチェスターに設立した「ニッカーボッカーニッティングカンパニー」がそのルーツ。名称からも容易に想像がつくように、当初はニット製品を主力としていた。この翌年、サイモンが亡くなり、息子のエイブとウィリアムのフェインブルーム兄弟が事業を継承し、「チャンピオン・ニッティング・ミルズ社」が誕生。この頃は、Tシャツやソックス、スウェットシャツの原型となるウールの下着を屋外労働者の防寒用として販売。まだまだ小規模なファミリービジネスだった。
そんな同社にも大きな転機が訪れる。1920年代に、ミズーリー州ウエントワースのミリタリーアカデミーの訓練用にウール製ウェアが採用されたのだ。その優れた品質で瞬く間に評判を集め、他商品の製造・販売のオファーも増加。だが、ウールは保温性が高く伸縮性に富む一方で、洗濯に費用と技術を要する上、高価なのが難点。そこで兄弟が目を付けたのが、ケアしやすく安価なコットン。これに持ち前のニット技術を応用し、コットン製のアスレティックウエアを開発したのである。軽く快適で、かつ安価。それはまさに革命であった。当然、評判は口コミで広がり、10年間の間で同社のスウェットシャツは、多くのミリタリーアカデミーや大学に浸透していくこととなる。
かように時代とともに進化していく王者の元に、次世代のキーマンがやってきたのは1928年。高級紳士服メーカー「ヒッキーフリーマン」で生地の裁断を担当し、服作りの豊富な経験とノウハウを備えたサム・フリードランドが入社。彼こそが、のちに不朽の名作「REVERSE WEAVE リバースウィーブ」を世に送り出す。
時に名作は何気ない一言から生まれるもの。「洗うと丈が縮んでしまい、ボディフィットが悪い」というクレームを、サムが出張先の大学関係者から受けたのは1934年。そこで彼の脳裏に浮かんだのが、同人物が続いて漏らした「生地の縦・横を逆にすれば、着丈が縮まなくなるのでは?」という言葉。これに着想を得た彼は、即スウェットシャツを裁断。通常は縦向きの織りを横向きに変更してみると、縮みが最小限に抑えられることが判明した。 リバースウィーブの原型が誕生した瞬間である。
4年後の1938年、まさにコロンブスの卵のような、この画期的アイデアの製法特許を取得。その後も改良に改良を重ね、1952年には2度目の製法特許を獲得。開発スタートから実に18年間の歳月を経て、同社カタログに初めてリバースウィーブを冠する商品が掲載された。以降、ブランドを象徴する特別な存在・不変の定番としての地位を固めていく。スタッフの間で「ファミリー・ジュエリー」と呼ばれているのが、その証左。
ちなみに「REVERSE WEAVE=逆編み」という名称は、編み生地の縦と横を逆にするという意味から付けられた製法のことだが、現在ではシリーズ名として、同社のスウェットシャツやフーディー(パーカ)のことも指すのはご存知の通り。なお、スウェットやトレーナー、フーディーといった呼称については、knowbrand magazineの過去の特集記事で詳しく述べている。気になる人はご一読あれ。
では、ここからはリバースウィーブの変遷を、年代識別の指標となるタグに注目しながら見ていこう。
〈Champion〉
「REVERSE WEAVE」のタグ変遷①
1950~1960年代「タタキタグ」
リバースウィーブの名を、
史上初めて刻んだ記念碑
その前に重ねて述べておくが、チャンピオンがリバースウィーブの名称でカタログに掲載し始めたのは2度目の製法特許を得た1952年。それ以前の1930年代末~1940年代にも同製法のモデルは存在したが、リバースウィーブの名称は使用されておらず、専用タグも存在しなかった。
では、この最初期に使われていたのがどんなタグだったかと問われば、ランナーのシルエットが印字された通称「ランナータグ」。その中でもサイズの大きな「デカいランナータグ=デカラン(デカタグ)」が付いた個体は、両V仕様&ドルマンスリーブ様式が特徴の超希少種。続く1950年代前半には、デカランよりも小さなサイズのランナータグが付くタイプも登場するが、こちらも相当な希少種として知られる。ともに実物を見ることは叶わないだろうが、古着談話の肴に覚えておくのもやぶさかではない。
その後(1950年代後半頃からと思われる)、いよいよリバースウィーブの名称がタグに冠された専用のタグが登場。こちらはそんなリバースウィーブの歴史を語る上でハズすことの出来ない、貴重な時代の証人である。
まずは襟元をご覧いただきたい。タグの四方が叩いて縫われた通称「タタキタグ」だ。これにもまた変遷があり、1950年代の初期~中期タイプには「U.S. PAT. No. ○○○○○」という特許ナンバーが記される。一方、写真のタグは後期タイプで、サイズ表記の右下には「RN26094」とある。これは1960年に米国の法律で、すべての服に対して表記が義務付けられた製造会社の登録番号を指す「RN番号(レジスタード・アイデンティフィケーション・ナンバー)」。ここ日本では、略してレジスターナンバーと呼称される。
さらに目を凝らすと、タグ最上段には縫い糸に被ってはいるが、当時の社名〈CHANPION KNITWEAR チャンピオンニットウェア〉の文字も。なお1967年には(CHAMPION PRODUCTS チャンピオンプロダクツ〉に社名が変更され、ロゴも変わった最終タイプに切り替わる。よって本モデルは1960~1967年に製造された個体だと推察される。ちなみにコットン100%という点にも注目。年代ごとの素材の組成も年代測定のポイントなのだ。
一方、ディテールに目を向けると、袖付けは伝統的なセットインスリーブ。各所に強度の高い2本針ステッチを施し、袖口やボディ裾には、冷気や風の侵入を防ぐために長めのリブを装備。ここで目を引くのが、両脇にあしらわれた「エクスパンションガゼット」と呼ばれるリブだろう。横方向の縮みの防止と動きやすさを両立するために1952年頃に採用された仕様で、肌に縫製箇所が当たらず着心地が良い4本針ステッチによるフラットシーマによる縫製が施されている。驚きなのは、今もなお作り続けられているリバースウィーブの様式は、すでにこの時代にほぼ完成しているという点だ。まさに不朽の名作とはこのこと。
なお、このエクスパンションガゼット=リバースウィーブと勘違いされがちだが、あくまでリバースウィーブは横方向に生地を使用する製法のことなので、混同しないようお気を付けあれ。
先述のようにタタキタグ自体、もはやかなりの希少種となっているため、懐事情と折り合いがつく個体と出会ったならば、それは運命。争わず躊躇せず即、手を伸ばすことをオススメする。
〈Champion〉
「REVERSE WEAVE」のタグ変遷②
1970年代初期「単色タグ」赤単
赤だけじゃない。実はサイズによって
5種類のカラーが存在
1970年頃になると、タグの記載事項がすべて単色でプリントされた通称「単色タグ」が姿を現す。どうやら社名がチャンピオンプロダクツに変更された後の1969年後半~70年が移行期だったようで、同時期にタタキタグと最初期の単色タグが共存していた。ちなみにタタキタグとは違い、タグの上部分だけを縫う製法に変更されている。
この単色タグにも、当然変遷が見受けられる。1973年頃までの最初期タイプは、生地の配合が100%コットンから、コットン90%:ポリエステル10%に変更され、タグ下部に横線がプリントされている(通称「アンダーバー」)。1973~1976年頃には下部のバーが姿を消すのだが、写真の個体はこの頃のモノ。赤一色なので「赤単」と称され、タグ中央のサイズ表記の上に「WARM UP」と記載されているあたりが、いかにもアスリート用の趣き。
ところで、単色タグには赤色以外にも数色存在することをご存知か。そもそもリバースウィーブのスウェットは一般向けの個別販売ではなく、大学に一括納品され学生に貸し出す方式であった。これに伴い、サイズによってXSが緑、Sが青、Mが赤といった感じで、色を変えることで管理をしやすくしていたとか。だがこの色分けのルールも単色タグ後期では変更されるので、通を気取るなら他ディテールとともに差異も覚えておくべきだろう。
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〈Champion〉
「REVERSE WEAVE」のタグ変遷③
1970年代後期「単色タグ」⻘単
配合素材をポリからアクリルに変えて、
機能性をアップデート
最初期、前期が存在するならば、後期もあって然るべき。1976~1981年頃までの後期単色タグでは、配合素材がポリエステルからアクリルに。この変更の理由は、着色性、退色のしにくさ、保温性、肌触り、軽量性といった各点でポリエステルよりもアクリルが勝るからと推察されるが、その分コストは増大。それでも機能性を重視してアップデートに踏み切ったチャンピオン。その姿勢に頂を目指す王者の志を見る。
ここで紹介するのは、通称「青単」。サイズごとに色を変えていた前期と違い、バリエは赤と青の2色。ただしXLサイズのみ4色のカラバリが存在し、写真はLサイズ。記載に目を凝らすと、コットン82%:アクリル12%に加えて、レーヨンが6%配合されていることが分かる。どうやら1978年前後に杢グレーだけに見られた配合のようだ。
このことから、マニア間では1年程度の短命で終わったコットン90%:アクリル10%の杢グレーの単色タグがレアものとして認識されているとか。しかし気になるのが、レーヨンを混紡した理由。ラインアップ中、最も汎用性の高いカラーリングである杢グレーで強度アップを試みたとも考えられるが、さて真偽やいかに。
かように様々な工夫が施されたリバースウィーブのスウェットだが、写真のように肩部分に縫い目がないことに気付いたアナタは、なかなかのスウェット通。通常とは異なり、肩部分に前後の身頃を繋ぐ縫い目のない一枚布で仕立てられている。これは元々、アメリカンフットボールの練習着として開発されたことに由来。要は、薄いプロテクターを付けた上から着た際に運動性を阻害しないようにという配慮から。理由を知ることで、機能美がまたさらに輝きを増して感じられるではないか。
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〈Champion〉
「REVERSE WEAVE」のタグ変遷④
1980年代「トリコタグ」
年代を見分けるカギは“®︎”。
今や歴としたニュー・ヴィンテージ
1981年頃に登場したのが、白地に青と赤で文字がプリントされたトリコロールカラーの通称「トリコタグ」。この辺になると、第一次古着ブームを経験した世代にとってはレギュラー感覚ではあろうが、40年以上経った今となっちゃ押しも押されぬニュー・ヴィンテージ。ご多分に漏れず、タグも年代によって変遷あり。ここで撮影した個体は、1989~1990年までに製造された後期タイプ。
年代を見分けるカギは「®(レジスターマーク)」の位置。タグ上部のChampionの文末の「n」の上に表記されるのが後期タイプで、それ以前の中期タイプでは、Championの頭文字「C」の上に表記されていた。また表面の下部に入る「MADE IN U.S.A.」の表記位置も、年代によって変わる。1981~1983年の前期は裏面に入っていたが、1983~1989年の中期と後期では、表面下部にプリントされるように。
加えて、前期は単色タグと同様だった杢グレーの素材配合比も、中期~後期ではコットン89%:アクリル8%:レーヨン3%に変更。ゆえにこの時期のモデルは経年変化しやすく、それが逆にヨレ感を尊ぶ人々からの人気を博している。比較しなければ分からないような差異だからこそ、マニアを虜にするポイントといえる。
ところで、チャンピオンといえば胸に刺繍された「Cマーク」。古着界隈で“目玉”とも呼ばれるこのアイコンのデビューは、どうやら1969年。同社のルーツである「ニッカーボッカーニッティングカンパニー」創立50周年を記念して考案されたことが、当時の広告から伺い知れる。気になる意匠の源流については、1960年代のタグに記されていた「ランナーズ IN C」というデザインが元になったという説も。頭文字「C」の中央でゴールテープを切るランナーの姿は、たしかによく似ている……が、これまた真相は藪の中。
なお、左胸に入るようになったのは1983年頃からとされている。それまでアスリート向けにしか販売していなかったリバースウィーブを一般ユーザー向けに市販化するにあたって、他社製品と差別化で始めた施策だったそう。今ではチャンピオンの名とともに誰もが思い浮かべるまでになったのだから、あぁ、流石の先見の明よ。
撮影した個体で注目すべきはその色。Cマーク以外のデザイン要素を排したシンプルなボディが、鮮やかなエメラルドグリーンを際立たせ、欲しいと探すもなかなか出会えない希少種である。こういった美色モデルは全般的に価格が高騰しているため、手に入れたければ、早め早めのアクションを。
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〈Champion〉
「REVERSE WEAVE」のタグ変遷⑤
1990年代「刺繍タグ」
まだまだタマ数多め。
ビギナーが選ぶ最初の一手に
長々と続いたタグの変遷もこれにて一旦の終着。1990年から登場し、リユースマーケットでもタマ数の多い通称「刺繍タグ」で締める。カラーリングこそ先述のトリコタグと同じだが、文字がプリントではなく刺繍されていることから、件の通称で呼ばれている。今回用意したのは、この刺繍タグを有する希少な90年代製フーディー。しかもタグ付きデッドストックということで、そのレアリティは待ったなしの青天井。
希少としたもう1つの理由はカラーリングにある。タグに記載された色名はブラック。黒いフーディーなんて浜の真砂のようなもの……なんて思ったら大間違い。チャンピオンでブラックがレギュラー展開されていたのは、1967~1972年頃前後の5、6年という短期間のみというから、実はレア。今でこそファッション文脈において定番色と認知されているが、そもそも清く・正しくを尊ぶアスリート向けのアイテムでは、ネガティブなイメージを想起させるブラックが採用されにくかったことが理由なのだろう。また黒染料は、酸化を起こしやすく使用が避けられていたという裏事情もここに加味される。
かくして、ヴィンテージでブラックのリバースウィーブの希少性が高まったというわけだ。さすがにデッドストックはプライスも含めて別格だが、墨黒にフェードした個体であれば出会いのチャンスはまだある。いやむしろ、その変化した風合いこそがユーズドの醍醐味。件のエメラルドグリーンと同様に、レアカラーに狙いを定めるのであれば、加点要素の1つに加えてみると、選択肢も広がるに違いない。
なお当個体は、左胸だけでなく左袖にも目玉付き。今では当たり前になったが、袖にこのマークが付き出したのは1984年。40年も前なのだから、時の流れというものはかくも早し。そういえば、先述のエメラルドグリーンは後期トリコタグでありながら、袖の目玉が見当たらない。その理由は不明だが、元々付いてないケースもあるのでそういうモノであると承知いただければと。あと、1996年以降に製造国がアメリカからメキシコへと変わる。「USメイドにこだわるなら95年までの刺繍タグ」という業界の格言もお忘れなきよう。
(→「刺繍タグ」の「リバースウィーブ」をオンラインストアで探す)
〈Champion〉
「REVERSE WEAVE」
プリントの魅力①
「複数段プリント」/
「染み込みプリント」
段々と増えることで高まる価値と
“ならではの景色”
先述のように、リバースウィーブは大学生のアスリート向けだったため、ボディに大学名やチームロゴがプリントされた個体が頻出する。中でも人気モチーフと名高いのが、アメリカの8つの名門私立大学で形成されるアイビーリーグもの。ただし本国アメリカでは、自分の出身校以外を着ることに抵抗を覚える人が多いため、特定の大学モチーフに価値を見出すのは日本独特の文化だそう。着ているだけで学歴詐称疑惑がかかると考えれば、さもありなん。
またプリントの人気は、仕様によっても左右される。わかりやすいところでは、1段より2段、2段よりも3段というように、プリントの段数が多いほど喜ばれ、価値も上がる。写真のモデルなど、その最たる例だろう。
後期トリコタグが付くマルーンカラーのボディに、ウィスコンシン大学のラクロスチームの文字とロゴが4段でプリントされた、一目で分かる豪華仕様。大学名がアーチ状に配置されているのも加点要素。プリント方式は1970年代に誕生以来、1980年代まで最もポピュラーだったラバープリントを採用。経年変化により亀裂が入る弱点も、「ひび割れ」という“ならではの景色”と愛好され、市場価値が上がっているというから価値観は人それぞれ。
またラバープリント以外では、ボディ表面に糊を付けて粉末を吹き付けて立体感を表現する「フロッキープリント」も人気だが、個体数が少なく、より希少とされているのが「染み込みプリント」。前述の2つの手法とは異なり、文字通り生地に水性顔料を染み込ませるのが特徴で、洗濯のたびにプリントが生地に馴染んでいくことで、侘び・寂びにも似た、味わい深い表情が生まれる。ゆえに通人に好まれ、値段も自ずと高騰化の一途。そんな中の1着がこちら。
タグのChampionの頭文字の上にレジスターマークがあることから、トリコタグの中でも1983~1989年頃の中期タイプであることが分かる。ネック周りのステッチがなぜか水色というのは謎だが、それ以上に杢グレーのボディに施されたアーチ状の染み込みプリントの渋さに目がいく。ついでにサンプルとして、先述の個体も併せてご覧いただく。
それぞれラバープリントで、シンプルな1段とバランスの良い3段。スポーツウェアらしく質実剛健なデザインが良き塩梅かな。これに先の4段と染み込みを並べてみると、各々の良さも一目瞭然。選択肢が増えても迷うことはない。周りに流されず、あくまで自分の好みでチョイスすれば、それが正解だ。
(→プリント入りの「リバースウィーブ」をオンラインストアで探す)
〈Champion〉
「REVERSE WEAVE」
プリントの魅力②
「バックプリント」/「両面プリント」
“面(ツラ)の良さ”を重視する
現代的価値観にもマッチ
本稿を結びとなる最終セグメントでも、当然プリントのハナシを続ける。写真は、90年代の刺繍タグを付けて胸にCマークをあしらった一見オーソドックスな1枚だが、これがなかなかの曲者だ。クルリと背面を向けると……中央にドカンと鎮座するスクリプトロゴ。前門の虎、後門の狼ならぬ、フロントに目玉、バックにスクリプトロゴと隙のない構え。希少性でいえばフロントよりも「バックプリント」の方が高く、着れば背中で語る際の説得力も増すというもの。
もう一方は、後期タイプのトリコタグが付いた真っ赤なフーディー。フロント胸元には、ラクロスチームのネームをアーチ&ストレートの2段で配置。収まりも良く、これも1つの最適解か。対して背面はテキストに頼らず、クロスと呼ばれるラクロス用のスティックが、交差(クロス)したプリントのみがあしらわれたストロングスタイル。
ここまで様々なプリント手法、スタイルをお見せしてきたが、前・後にプリントが入る「両面プリント」もまた遭遇率が低く、市場にリリースされた途端に姿を消すような即捕獲対象。選ぶ際に最優先すべきは“面(ツラ)の良さ”。それ以外のディテールは、麻雀における裏ドラ(あれば嬉しい)程度に考えておいて差し支えない。
ウンチクよりもビジュアルを重視する現代的価値観が求めるのは、百聞よりも一見の説得力。キャッチーなプリントには間違いなくそれがある。されど時間の経過とともに、その数を減らしていくのがヴィンテージの性。さらに希少化が進む未来に向けて、今こそディグる最後の好機。
「自分が貰ったモノを分け合うドラマ 未来は俺等の手の中」とTHA BLUE HARBのBOSSも言っている。
(→プリント入りの「リバースウィーブ」をオンラインストアで探す)
枯渇化進むヴィンテージ古着の世界にあって、第一次古着ブームから30年近くも王座を防衛し続けてきた“スウェット界の絶対王者”、チャンピオンのリバースウィーブ。ディテールの変遷を追いかけ、年代ごとに蒐集するという王道の楽しみ方はもちろん、色やプリント、デザインなどこだわるほどにハマる沼。
次回はその魅力の深淵にさらに一歩踏み込んで、玄人好みの珍品、その名も「珍ピオン」の数々をセレクション。それは次なる世代に引き継ぐべき遺産か、はたまた歴史の波に消えていく泡沫か。選ばれるコーナーは赤か青、もしくは白? 人々をトリコにしてきた王者へのジャッジを諸君へと託す。