INTERVIEW

“共に過ごした記憶を味として残しつつ、美しく蘇らせる” 2nd STREET × T&Kによりスタートする「匠の手洗い」とは!?

万物に対して一家言を持つ“モノ好き”たちが、その魅力を語る際に使う“味がある”という言葉。意味合いとしては“独特の趣や面白さが感じられるさま”を指すが、この趣や面白さの定義というのが実に難しく、その基準はまぁ多様。あくまでも主観によるところが大きく、その人の好みに左右される。アナタにとっての“味”は、別の誰かにとっては欠点であるかもしれない。当然、その逆もまた然り。

モノごとの価値が常に表裏一体なのであれば、パラダイムシフトを起こし、その欠点を物理的に美点へと変えることも可能なのではないか?例えば、飽きたり汚れたりして着られなくなった服を黒に染め変える。例えば、愛着のある服を永く使い続けるために快適加工を施す。これを「2nd STREETセカンドストリート」では、それぞれ「黒の再生」「魔法のクリーニング」と名付け、“新時代のスタンダード”となり得るサービスとして提供し、好評を得てきた。

2024年7月、これに第3のサービスが加わる。その名は「匠の手洗い」。

圧倒的実績数を誇る、シューズクリーニングのパイオニア〈T&K〉

衣服と共にスタイリングの一端を担うシューズやバッグの重要性は重々承知だが、いざ家庭で洗おうにも手間がかかるしと、使い古して放置したまま幾星霜。そんな人々の一助として期待出来るのが、このクリーニングサービスである。本稿ではその根幹となるパートナー〈株式会社T&K〉の工場を潜入レポート。

他社を圧倒する熟練の技術から、実際にクリーニングしたアイテムのBefore → Afterまで、「匠の手洗い」の全容に迫る。

“靴・鞄クリーニング”の文字が誇らしげに光るネオンボード。

その前にまず知っておきたいのが、セカンドストリートが株式会社T&Kとパートナーシップを組むこととなった理由。これは実にシンプル。その圧倒的な実績数にある。同社は国内において、靴のクリーニングがまだ一般化していなかった黎明期から手掛けるシューズクリーニングの先駆者であり、これまでに約30万点以上もの靴を扱ってきた経験値と知見は、他社を圧倒する。

通常は見ることが叶わない工場内の様子。棚にはクリーニング前の靴、クリーニング後の靴がしっかり分けられて並ぶ。

そして、その豊富な作業経験により成し得たのが、卓越したクリーニング技術の確立に他ならない。さらに現状に甘んじることなく、新技術や技法の習得、洗剤やクリーム、ブラシなどの作業用品の開発&改善にも注力し、常に品質向上のための試行錯誤を続けている。

なんて述べたところで、百聞は一見にしかず。

ここからは実際のサービスの流れを追っていくとしよう。

「匠の手洗い」
STEP① 検品­/除菌・消臭

工程は大きく分けると4つ。最初に行われるのが、全国各地から工場に送られてきたアイテムの「検品」。アッパーやソールは当然のこと、ライニングやインソールに至るまで全てチェックする。付属パーツの有無や状態などを細かく確認し、1足の検品作業に要する時間は約2分~3分。スピーディかつ精緻なチェックによって、持ち主さえも気付かなかったポイントを洗い出す。

日々、全国から届くクリーニング依頼。これらをまず検品するところから作業は始まる。

そもそもシューズというアイテムはスニーカー、革靴問わず、布や金属、ラバーなどあらゆる素材で構成されている。ゆえにクリーニングを行う際にも、素材ごとの適切な対応を知っておかなければならない。先述のように膨大な過去データを蓄積しているT&Kでは、素材、種類、形状、臭気を確認し、そのシューズにあったベストな洗浄方法を導き出すことが可能だ。

チェック箇所はアッパー、ソールに始まり、ライニングなど細部にまでわたる。

検品を終えたら、いよいよ洗浄……ではなく、特殊水室にて除菌・消臭。アッパーに使われた革にダメージを与えないよう、湿度は常時85%以上、温度は弱酸性(ph5.5)にて管理される。

「匠の手洗い」
STEP② 手洗い洗浄

ここからはメインイベント「手洗い洗浄」に移る。機械を使用した靴クリーニングを行う大手クリーニングチェーンもあるが、T&Kでは1足1足丁寧に手洗いで洗浄を施している点が最大のポイント。その工程を、まずはスニーカーを例に見ていこう。

CASE.1 スニーカー(表革)

1足1足、丁寧に手洗いで洗浄。まずはソールから。その手際の良さはまさしくプロの仕事。

ここで使われているのは、独自配合された自社製洗剤。一般的な中性アルカリ洗剤は、汚れこそよく落ちるが、同時に素材の組織を分解する力も働いてしまう。その点こちらは分解を抑えつつ、革にコラーゲンやタンパク質、脂質などの栄養分を与えながらやさしい弱酸性水でクリーニングが可能。要は、拭き取り化粧水のように洗浄と素材のケアを同時に行うという寸法だ。

一連の流れがこちら。ソールに続いて、アッパー → ライニング → シューレースと洗浄していく。

まずはシューレースを外して、洗剤をスプレーで全体に塗布。アウトソールからアッパーへ、ブラシを使って汚れを擦り落としていく。ブラシは靴の素材に合わせて数種類を使い分ける。インソールは脱着可能であれば外して、シューレースと一緒にウオッシュ。靴の外側はもちろん内側のライニング部分も忘れずに。

洗剤を水で流し落としたら、タオルでしっかりと水分を拭き取る事も忘れずに。

こうして全体の洗浄が終わったら、流水でしっかりと洗剤を流し落とす。少しでも残っていると黄ばみなどの原因となるので要注意。あとは乾いたタオルできっちり水分を拭き取れば、洗浄の作業工程は完了。

さて、この洗浄時に最大の敵となるのが、シューズ自体の経年劣化であることも語っておかねばならない。中でも見落とされがちなのが、ライニングやソールユニットなど表からは見えない部分。たとえば〈NIKE ナイキ〉の「AIR FORCE 1 エア・フォース1」。表面上は問題ないようでも、実は内部のエアパックが加水分解でボロボロになっていることも。通常であれば水でザブザブ洗うが、それでは内部まで浸透し、さらにダメージを負ってしまう可能性があるため、事前確認してなお「リスクを承知で洗ってほしい」という場合は、次亜塩素酸水のスプレーをかけて除菌した上で、洗剤で表面の汚れを拭き取る洗浄法を取る。これが“拭き上げ”だ。

ではCASE.1のスニーカーに続いて、革靴とバッグの洗浄工程もお見せする。基本はどれも同じで、水を使った丸洗い。

CASE.2 革靴

工程はスニーカーと一緒だ。汚れだけでなく、インソールやライニングに染み込んだ臭いもしっかり落とす。

革靴もスニーカーと基本的な作業内容は一緒。丸ごと洗浄することでカビやイヤな臭いも、汚れやシミと同時に解消される。

CASE.3 バッグ(白の表革)

表革のバッグの場合、スニーカーや革靴と同じく丸洗いが基本。

バッグの場合、知らず知らずのうちに内部に溜まりがちなホコリやゴミを取ったのち、洗浄に移る。素材によって丸洗いと拭き上げを使い分けるのだが、今回は清潔感が求められる白色の表革だったため、洗浄効果を第一に置いた丸洗いを選択。

写真を見ればわかるように、ほとんどのスタッフが中性洗剤を使用する際以外は、ゴム手袋などをせず素手で作業に励んでいる。これは使用されている洗剤が肌に優しいということの証左であり、同時に靴やバッグに対しても優しいことを意味する。

CASE.4 バッグ(色ものの革)

色ものの革の場合、色ムラといった経年変化による“味”を損なわないよう、拭き上げで洗浄を行うことが多い。

こちらも同じくバッグだが、“洗浄後の仕上がり時の風合いを重視すべきかどうか”で洗浄方法を変える。写真のような色ものの革の場合、色ムラなどの経年変化が顕著に表れていることが多く、多くの人々が“味”と捉えるその表情を損なわぬよう注意が必要。そこで拭き上げの出番だ。

タオルに溶剤をつけて、表面の汚れを丁寧に拭き取っていく。ステッチ部分やパーツの切り替え部分といった細部にはピンセットや歯ブラシなども併用。手間という観点で言えば、丸洗いよりもはるかに大変だという。

「匠の手洗い」
STEP③ 乾燥/洗浄チェック

手洗い洗浄をメインイベントと先に述べたが、実は同じくらい重要なのが「乾燥」。

どんな靴やバッグであっても必ず接着剤が使われていることはご存知の通り。この接着剤には耐熱温度が設定されており、低いものでは40℃ほどで溶け出す。早く乾かそうと高温で熱乾燥すると接着剤が溶け出し、冷える際に変形して凝固してしまう。これが劣化のトリガーとなるのだ。このためT&Kでは自然乾燥により近づけるべく、湿度と温度を管理した専用乾燥室を使用する。

洗浄が終わった靴やバッグは専用乾燥室へ。自然乾燥に近い室温&湿度でしっかりと陰干しする。

室温20℃~30℃、湿度35%以下という靴にとっては最適な環境下で影干しして乾燥する。以上の工程を終えた段階で、独自の検査判定を行い、臭いや汚れの残留を確認。基準をクリアしていなければ再び洗浄のやり直し。この徹底したクオリティコントロールもまた、同社が支持を集める理由なのである。

「匠の手洗い」
STEP④ 最適仕上げ

クリーニング工程のラストは「最適仕上げ」。アッパーが褪色していたり、洗浄でも落ちないシミがある場合は補色でフォローする。洗浄前写真と比較しながらスタッフが手作業で、1足ごとに塗料を調色。これをスポンジや筆を使って塗布しつつ風合いを重視した仕上げが行われる。

スニーカー、革靴、バッグで基本工程はほぼ一緒。ただし仕上げに要する時間は多様で、ケース・バイ・ケース。15分そこらで終わるものもあれば、2時間近くかかる場合も。

CASE.1 スニーカー

写真のように白いスニーカーの場合、「購入時の状態に近づけたい」というリクエストが多いため、仕上げ加減を悩むことなく、比較的簡単。

CASE.2 革靴

革靴の場合は、履き込むことで生まれる風合いもポイント。仕上げの着地点をどこに置くか。この塩梅が実に難しいのだ。

スニーカー、革靴ともにスウェード素材の場合は、ブラッシングで寝ている毛を立たせ、根元からシミや汚れを除去する作業が加わる。ちなみに仕上げ具合のリクエストは可能。さらにはイメージと違った場合の再仕上げも無料。この非常にきめ細やかで、かつ柔軟な対応力も同社の強みだ。

CASE.3 バッグ(白の表革)

匠の手洗い_シューズクリーニング_T&K-25

スレなどによる汚れが目立ちやすい白色は、“味”よりも清潔感のある仕上がりが喜ばれ、薄化粧とシミや汚れなどの隠蔽を両立させる技量が試される。

同じ仕上げでも、バッグにはシューズと異なる技術が必要とされる。それが“薄化粧”だ。靴ならば多少厚塗りになっても気にならないが、手や腕に常に触れるバッグの場合、持ち心地に違和感を覚える人も多い。そこでなるべく塗料を薄く塗って仕上げることが肝要。

CASE.4 バッグ(色ものの革)

経年変化による色ムラを考慮し、色の濃い箇所と薄い箇所の中間の色合いを調色して塗布。あくまで“自然に馴染ませる”のがコツ。

また写真のような濃色の色ものの場合、経年変化による色ムラも考慮しなければならない。色の濃い箇所、薄い箇所のどちらかに照準を合わせるのではなく、その中間の色合いを狙っていくことで自然な表情に。

クリーニングが済んだら、丁寧に梱包にして発送。到着まで期待して待つべし。

以上のクリーニングが完了したら、納品前に仕上げ状態をアーカイブするために写真を撮影。この蓄積されたデータが、さらなる技術改良の礎に。最後に不織布で包み、エアキャップで梱包してフィニッシュ。あとは美しく蘇ったお気に入りのシューズ&バッグが手元に戻ってくるのを、指折り期待して待つばかり。

「匠の手洗い」
STEP⑤ Before → After

クリーニングを終えたスニーカーと革靴、バッグ2種が無事戻ってきたのだが、どれほどの効果があったのか。気になる結果やいかに!? Before → Afterを一気にお見せする。

Before → After
CASE.1 スニーカー

全体的に汚れて黒ずんでいたアッパーも爽やかな白が復活。ソールの黄ばみも薄れてワントーン明るくなったことで、印象も激変。

Before → After
CASE.2 革靴

匠の手洗い_シューズクリーニング_T&K-34

気になっていたトゥ部分の汚れとヒール部分のスレがすっかり消え、履き込んだ革の風合いをしっかり残しながらも、美しい艶感が蘇った。

Before → After
CASE.3 バッグ(白の表革)

全体の汚れが落ちて、純白のボディがカムバック。エッジ部分のスレなども補色されてクリーンな佇まいに。これで薄化粧だというのだからお見事。

Before → After
CASE.4 バッグ(色ものの革)

色ムラが均等にならされて自然な風合いと色合いに。革のハリ感と艶感の違いも一目瞭然。シルエットも美しく、新品時以上の価値が生まれた。

どれも気になっていた汚れはしっかり落としつつ、味わい深く自然な仕上がり。しかも型崩れするどころか、むしろ素材のハリ感が復活してフレッシュな印象。期待以上の結果に、これは思わずご満悦。それでは最後に、「匠の手洗い」で提供されるコースについて。

……とは言っても、シューズ、バッグともに作業内容は変わることなく、依頼点数でプライスのみが変わる。靴は1足3,900円。2足で6,800円、3足で10,700円のコースを用意。①スニーカーのみ、②革靴のみ、③スニーカーと革靴を組み合わせるでも当然OK。バッグは1点8,900円、2点で16,800円なのでセットで依頼するとコスパも高まる。同業他社を凌駕するこだわりのサービスが、手頃なプライスで体験出来るとなれば、この機会に試さない手はない。

(→「匠の手洗い」サービスページはこちら)

 

序文でも述べたように、あくまで主観が指針となるゆえ明確な答えが存在しないシューズ&バッグのクリーニング。だからこそ職人的技術とクリエイティブなセンスが要求され、これを有するT&Kという存在があってこそ「匠の手洗い」は成立する。

同社の代表曰く、「大事なのは“新品同然の状態に戻す”のではなく、味や風合いは残しつつ“現状のベストに近づける”こと」。共に過ごした記憶はそのまま、美しい姿に甦ったシューズやバッグは、さらに愛着を持って付き合っていける無二の相棒となるに違いない。

唯一無二のクリーニングサービスを試す・試さない。Now is the time to choose(センタクをするなら今)。

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