FASHION

欲しいのは“本モノ”のダウンジャケット ケース・バイ・カナダグース

本当に必要なモノ、それすなわち“本モノ”。今シリーズは来たる冬本番を先取り、トップブランドにフォーカスを当てて必携のダウンジャケットを探っていく。前回ご紹介したフランスの巨星〈MONCLER モンクレール〉に勝るとも劣らない、圧巻のハイスペック。今回はそんな、ヘビーデューティな仕様で知られるカナダの名門について。

極寒のカナダで信頼性を高め続けた
ハイスペックダウンの最高峰。

CANADA GOOSE カナダグース〉。その名前が頻繁に聞かれるようになったのは、日本ではここ数年のことかもしれない。今や毎シーズン争奪戦の様相を呈する人気ブランドのダウンだが、本国カナダにおいての歴史は半世紀以上に及ぶ。まずはその経歴から掘り下げていこう。

1957年、カナダのトロントにて誕生。サム・ティックによって立ち上げられた当時は、〈Metro Sportswear メトロスポーツウェア社〉名義でウールベストやレインコートの製造などを手掛けていた。ダウンウェアへと舵を切るきっかけは1970年代に訪れる。大容量に対応可能なダウン充填機を発明し、自社ブランド〈snow GOOSE スノーグース〉を設立したのだ。以降、極寒の地で活動する人々からのデータを土台としたハイスペックなダウンウェアで評判を集め、カナダ人初のエベレスト登頂者へも製品を提供。多くの傑作を携えて極寒の大自然に立ち向かった。

スノーグースからカナダグースへと名称を改めたのは、1990年代に入ってから。2000年代になると創業者の孫にあたるダニー・リースが社長兼CEOに就任し、「メイド・イン・カナダ」を合言葉にさらなる品質向上に尽力。現在でもすべてカナダ製を貫くダウンジャケットは、自然の中だけでなく街にも映えるファッション性を備える。

「EXPEDITION PARKA
エクスペディション パーカー」
現地のニーズから生まれた
極寒に動じない“ビッグレッド”

ここからは代表的なアイテムを紐解いていくが、そのどれもが充実のオーバースペックにカナダの誇りを感じさせる。なかでも象徴的存在と言えるのが「EXPEDITION PARKA エクスペディション パーカー」。南極のマクマード調査ステーションに滞在する研究者たちのニーズから開発された、フード付きのミッドレングスモデルだ。

シェル素材にはポリエステル・コットンにテフロン加工を施した「アークティックテック」を採用。半永久的な撥水性能を持ち、耐久性にも優れるこのマテリアルで、650フィルパワーのダックダウンを内包する。ゆえに極寒の作業現場でも抜群の保温性とタフネスを実現。さらに、生地の程よくマットな質感は独特な発色につながり、アイコニックな赤は“ビッグレッド”の名でも親しまれているようだ。

南極調査隊からの要望を元に生まれたエクスペディション パーカー。

フロントのストームフラッパーや袖口のリブニットカフなど、細部にも防寒性能を高める仕掛けが。

神は細部に宿ると言われるが、ハイスペックの神も確かにディテールに鎮座する。フード部には凍結しにくいリアルコヨーテファーを備え、2方向のドローコードとワイヤートリムで万全の構えに。フロントセンターはYKKダブルジップと二重のストームフラップで防御され、顎の当たる部分には起毛フリースまで付けられるといった細心設計が光る。ほか、袖口に伸びる厚手で長いリブニットカフ、雪の侵入を防ぐウエストのパウダーガード、上部にフラップ、サイドにジップをそれぞれ備えた2WAY仕様のフロントポケットなど、“神スペック”を支える細部のこだわりは枚挙に遑がない。

「JASPER PARKA
ジャスパーパーカー」
“日本人向け”のスペシャルモデルが
ブランドの飛躍の一因に

日本におけるカナダグース旋風を巻き起こしたモデルが、「JASPER PARKA ジャスパーパーカー」だ。今作は2012年に発表されたが、実はカナダグースきっての名作「CHATEAU PARKA シャトーパーカー」を日本人の体型に合うようアップデートさせたモデル。この日本規格のパターンメイキングが爆発的ヒットを呼び込み、“あのワッペン”が街のそこかしこで輝いたのだ。

ダウン量を減らすことで、シルエットをややタイトに変更。着膨れの少ないスタイリッシュなルックスは、今も隆盛を誇るアーバンアウトドアのアイコンともいえよう。フードのコヨーテファーは取り外し可能で、シンプルなデザインとイージーケアな仕様がスーツスタイルでのヘビーユースも促進する。

日本人の体型に合うよう、シルエットが調整されたシャトーパーカー。

フロントにはパラシュートボタンを採用し、落ち着いた雰囲気に。

テープ状の太い紐で固定するパラシュートボタンを備えたフロントが、洗練された前立てになった点も見逃せない。光沢を抑えたアークティックテック素材も相まって、着用シーンを問わない落ち着いた印象に。信頼のハイスペック、それでいてオン・オフ頼れるビジュアル。ここ日本で価値が証明された、カナディアンダウンの大いなる前進である。

なお、サイズ選びのポイントとなる規格についてもここでさらりと触れておく。カナダグースには大きくふたつの規格が存在し、世界規格の「インライン」と日本人向けの「ジャパンSMU」に分けられる。前者は通常の「レギュラーフィット」とやや小さめの「フュージョンフィット」に枝分かれ。後者は細身でコンパクトなサイズ感となり、日本の気候に合わせてダウン量を調整している。

「RUSSELL PARKA
ラッセルパーカー」
ミニマルで軽やかな印象の
日本規格のショートレングス

こちらの「RUSSELL PARKA ラッセルパーカー」も、ジャスパーパーカーと同じく日本規格の人気モデルだ。最大の特徴は、ショートな丈感とミリタリーを思わせるテイスト。当然、素材にはアークティックテックを使う。印象的な4つのフロントポケットは、すべてマチ付きのフラップ仕様。フラップはパラシュートボタンによって開閉可能で、フロントボタンとデザイン的なシンクロを見せる。

ショートな丈感とミリタリーテイストが特徴のラッセルパーカー。

同色のエルボーパッチやサイドポケット内側にフリースをあてるなど、細かな配慮も見逃せない。

チンストラップ付きのフードと首回りのコヨーテファーはともに着脱可能で、よりミニマルな面持ちも楽しめる今作。とはいえ細部までやはり手を抜かない。フリース内蔵のサイドのジップポケットがハンドウォーマーの役割を果たし、ボディと同色であてられたエルボーパッチがさりげないアクセントとなるなど見どころ満載。そういった細かな配慮も、日本人の心に響く要因だろう。

そもそもカナダグースに代表される本格ダウンウェアは、比較的温暖な日本においては大袈裟な機能性を持つ。ではなぜ、カナダグースのダウンは日本でこれほど支持を得るのか。オーバースペックにこそロマンを感じると言えばそれまでだが、そう捉える向きは決して多くないだろう。むしろ、機能性に裏打ちされた“服の背景”、左肩のワッペンに代表される“わかりやすさ”、そして多少値が張ろうとも“本モノ”を長く愛用する“サステナブルな思考”が影響しているのではないだろうか。そう考えれば、今後もカナダグースの覇権は揺るぎそうもないのだ。

「LANGFORD PARKA
ラングフォードパーカー」
タフネスとクリーンさが同居する
着用シーンを問わない万能型

さて、再びアイテムに焦点を絞ろう。続いて紹介するのは、丈を長めに設定することで保温性を一層高めたコートライクなダウンジャケット「LANGFORD PARKA ラングフォードパーカー」。前述のジャスパーパーカーに近いすっきりとしたシルエットに目がいくが、フロントにフラップポケットを設け、程よく武骨な印象となっている。

ラングフォードパーカーは、コートのように長めの丈を採用。

ハイスペックはそのままに、前立てはベルクロ仕様でさっぱりと。

フラップポケットの上部にはハンドウォーマーポケットを備えるなど、利便性の高さもウリ。前立てはベルクロ付きで、ボタンやファスナーが前面に出ない顔立ちからはクリーンさも漂う。ジャケットの裾が出ない着丈とシンプルデザインのおかげで、ビジネスシーンでの登板も大いに期待できるだろう。一方で、リブのついた袖口やアークティックテック素材といった定番ポイントも抑えている。すなわち、“いいとこ取り”の冬の相棒候補だ。

「KAMLOOPS カムループス」
ひときわ異彩を放つ迷彩柄は
実用的ディテールも抜かりなし

大自然で揉まれたハイスペックとは裏腹に、アーバンなワントーンカラーが多いカナダグースのダウンジャケット。その中にあって大胆なカモフラージュ柄を纏う「KAMLOOPS カムループス」は、文字通り異彩を放っている。明らかにミリタリーに振ったデザイン。それもそのはず、一説によるとこちらは実際に軍のエリート部隊に供給されていたスペシャルフォースジャケットを元ネタとするようだ。

ミスペシャルフォースジャケットをモチーフとするカムループス。

両サイドにはジップ開閉式のスリットが。シルエットの変化が楽しめ、着脱も容易に。

背中のロゴの下には、通気性を高めるベンチレーションも備えている。

アークティクテック素材のボディに迷彩柄を施し、着脱可能なフードからあえてファーを除去。ワイルドに偏りすぎない見事な匙加減で、街着としてのポテンシャルを高めている。フロントジッパーの前面には面テープで開閉するウィンドフラップを装備し、サイドの裾に入ったジップスリットでシルエットの調整が可能に。見た目のインパクトだけでなく、しっかりと考え抜かれた実用的な“内面”。それがこのカモフラージュ柄ジャケットのキモなのカモ。

「FREESTYLE フリースタイル」
自由度の高いダウンが支える
あなたらしい冬の装い

写真を見ればお分かりの通り、ダウンジャケットではなくダウンベストである。しかし、これもまたカナダグースが誇る傑作ダウンウェアのひとつだ。高い防寒性能を担保しつつ、様々なコーディネイトで楽しめる「FREESTYLE フリースタイル」。モデル名が体を表すかのような自由度の高い1着をもって、本稿の締めとしたい。

フリースタイルと名付けられたダウンベストは、無駄を省いたデザインの中で左胸のワッペンが主張。

後ろ身頃を前よりも長くとることで、腰回りの防寒にも配慮。

無駄を省いたベーシックなデザインにあって、左袖から左胸へと生息地を変えたワッペンが控えめながら雄弁に主張する。フロントジップの前面にはスナップボタン式のストームフラップをオン。上部とサイドに加えてパッチポケットが加わった3WAYのポケットも頼もしい。後ろ身頃の着丈を長くすることで腰回りの防寒も考慮した。ダックダウン80%フェザー20%の温かみは、ベストタイプでも十分に感じ取れるだろう。

2回に渡って特集した“本モノ”のダウン。あなたのお気に入りは、果たして何着見つかっただろうか。あなたに本当に必要なものは、極論を言えばあなただけにしかわからないのかもしれない。しかし、モンクレールとカナダグースのダウンジャケットは、間違いなく推薦に値するはずだ。

所有し、身に付けるだけで気分を変える1着。昨今の言いようのない不安をも払拭してくれる1着。今こそ求められる“本モノ”を、あなたのワードローブに加えてほしい。

→「ケース・バイ・モンクレール」はこちら

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