FASHION

欲しいのは“本モノ”のダウンジャケット ケース・バイ・〈ナンガ〉

こんなにもワクワクする冬は久しぶりかもしれない。なにせ、日常がようやく落ち着きを取り戻し始めている。もちろん油断は大敵だが、どこかのお偉いさんが唱えた“新しい生活様式”はすでに少しだけ古くなり、世間はもう一歩新たなステージへ踏み込んだ。自由気ままな外出は、もはや夢物語ではない。

となると目下の課題は、日増しに本格化する寒さとどう向き合うか。やはり頼りにすべきは、“本モノ”のアウターであろう。なかでも筆頭が、冬の王者たるダウンジャケット。昨年ご紹介したフランス発の〈MONCLER モンクレール〉やカナダ発の〈CANADA GOOSE カナダグース〉以外にも、ぜひ今手にして欲しいモノがある。

それが、日本発の“本モノ”。〈NANGA ナンガ〉のダウンアイテムだ。

真綿布団から唯一無二の寝袋へ。
ユーザーを支え、支えられる、
ジャパンブランドの理想形。 

 前出の海外二大巨頭〈MONCLER モンクレール〉〈CANADA GOOSE カナダグース〉については、以下の記事を参考にしていただきたい。

(→〈MONCLER モンクレール〉に関する特集記事は、こちら
(→〈CANADA GOOSE カナダグース〉に関する特集記事は、こちら

では本題。まずは〈NANGA ナンガ〉の歴史や概要について。ナンガってナンダ? という疑問から話を進めていこう。

事の発端は1941年、横田駒三が滋賀県の米原市で興した「横田縫製」をブランドのルーツとする。当地は真綿布団の生産地として知られ、かつては国内シェアの約3割を占めるほどの隆盛を誇った。地域の下請け業から始まった横田縫製も、その勢いに乗って順調に成長。1950年代からは国内の大手布団メーカーから発注を受け始めるなど、存在感を増していく。

しかし、1985年に転機が。かの「プラザ合意」による円高のあおりを受け、国内メーカーがこぞって生産拠点をアジアへ移し変えてしまう。寝具業界も御多分に洩れず、結果的に横田縫製への発注は激減した。そんな苦境の中、1988年には大手アウトドアブランドからシュラフ(=寝袋)の縫製加工を受注。当時ブームとなりつつあったアウトドアアクティビティにおけるキーアイテムが、業績回復への一筋の光明になったのだ。

とはいえ、安価な労働力を求める世界的な流れは止められず。1990年代になると寝袋の受注数も低下。横田縫製は再び窮地に陥った。想像の通り、業績の悪化はさまざまな軋轢を生む。1993年、2代目社長の横田晃は営業担当の共同経営者と袂を分かつことを決断。新会社「ヨコタコスモス」を設立し、再スタートを切った。組織変更後まもない頃は、営業の術もなく取引先もない状況だったという。

そんなヨコタコスモスを救ったのは、他でもない寝袋ユーザーだった。使い込むうちに破損した寝袋の修理依頼が、多くの消費者から直接舞い込んだのである。海外生産が中心のため、国内では縫製修理ができない。そんな実情からニーズは増え続け、寝袋の補修に追われることとなる。そして修理依頼の増加こそが、独自メーカーとしての歩みを決定づけるのだ。

その第一歩として、1994年には高品質ダウンを手掛ける「河田フェザー」との取引きを開始。さらには1995年、社名を現在の「株式会社 ナンガ(NANGA)」に変更する。ヒマラヤ山脈にそびえ立ち、数多くの遭難者を出すことでも有名な“人食い山”「ナンガ・パルバット」に由来する名称に込められたのは、どんな困難をも乗り越えていく強い決意。その覚悟が実を結び、翌1996年にリリースされたプライベートブランドの寝袋は高い評価を得た。

着る寝袋とも言うべき、ナンガの高品質なダウンジャケットが生まれたのは2003年のこと。これまで培った技と知恵をガイド役に、アパレル業界へ踏み出したナンガのチャレンジ。その詳細は、次項のアイテム紹介にて。

(→「河田フェザー」に関する特集記事は、こちら

AURORA DOWN JACKET
オーロラダウンジャケット」

進化をやめないフラッグシップモデル。 

2002年の試作スタートから試行錯誤を重ね、2003年に辿り着いたブランド初のダウンジャケット。それこそ「AURORA DOWN JACKET オーロラダウンジャケット」であり、今なおアップデートを繰り返しながらアイコンとして君臨するフラッグシップモデルとして知られる。当然、内包するダウンには河田フェザー製の上質なヨーロッパ産ホワウイトダックダウンを使用。暖かさは折り紙付きだ。

フラッグシップモデルに当たるオーロラダウンジャケット。撥水性に優れた独自素材、オーロラテックスを採用する。

一方で最大の強みは、表地に採用された独自開発素材「AURORA TEX オーロラテックス」にある。ダウンは濡れると途端に防寒性能が弱まるため、水が天敵とされる。ただし、ナイロン生地に多孔質ポリウレタン防水コーディングを施したハイテク素材にかかれば心配は杞憂に。なんと水圧20000mmにも耐えるほどの防水性を持つのだ。しかも表面のステッチを極力減らすことで、雨の侵入を最小限にガードする徹底ぶりである。

保温性のカギを握る上質なホワイトダックダウンは、大きめに設計されたフード部分にもたっぷり内蔵。

同素材はまた、保温性の高さからくる過剰な発汗というダウンウェアの泣きどころにも対応。極めて浸透性が高いため、余計な湿気を外部に逃してドライで快適な着用感を保ってくれるのだ。つまりは、寝苦しさを排除する寝具メーカーとしての腕が存分に活かされたウェア、とも言えよう。

止水ジップやリフレクターロゴなど、ディテールにもアウトドアウェアらしい機能性が潜む。

機能面で秀でながらも、ミニマル&シンプルなデザインで街着としても活躍必至。ひとめでは伝わりにくい作り込んだディテールもアーバンアウトドアの最高峰とも言うべきもので、止水ジップ、ポケット内部の起毛素材、動きやすいラグランスリーブなど、随所にこだわりが隠される。

TAKIBI DOWN JACKET
タキビダウジャケット」

水も火の粉も苦にしない、
ダウンウェアの新境地。
 

 水分と同じくダウンジャケットが苦手とするもの、それすなわち火の存在だ。ただしこちらは内部のダウンではなく、表面素材が原因に。ナイロンに代表される化学繊維はとかく燃えやすく、火を囲むようなアクティブシーンでは使用厳禁となる。

以上を踏まえたうえで、この「TAKIBI DOWN JACKET タキビダウジャケット」をご覧いただきたい。ど直球のネーミングが示すように、焚き火を楽しむことを前提に作られている。そんなパラドクスを叶えた秘密が、ズバリ「タキビ生地」と名付けられた独自開発素材だ。

タキビジャケットはその名に違わず、焚き火シーンにも耐えうる難燃性が魅力だ。

ややざらついたコットンライクなこの生地は、難燃性の高いアラミド繊維をポリエステルに混紡したもの。これで冬の寒空の下でも、キャンプのハイライトたる焚き火を心置き無く満喫できる。寄せる火の粉はむしろ、静かな夜を彩る最高のスパイスとなるのだ。

フロントには6つのポケットを備え、大小さまざまなギアを収納可能。ハンドウォーマーも頼もしい。

なお、内部の羽毛にもナンガのオリジナルマテリアル「Ultra Dry Down 超撥水ダウン」を採用。雨や湿気による形状変化が少ないダウンのため、保温力の低下を最小限に抑えてくれる。さすがは羽毛を知り尽くしたジャパンブランド。丁寧な仕事ぶりには、まことに頭が下がる。ちなみに、その頭を包み込むフード部分はスナップボタンで着脱可能だ。

背面にもポケットが付き、サイドには動きやすさを担保するジップ式のベントが。

フード以外にも、頼り甲斐のあるディテールを数多く搭載する。フロントには左右合わせて6つものポケットを備え、ツールが増えがちなキャンパーを力強くサポート。後ろ身頃にもポケットが付き、もはや着るバッグの様相を呈している。それでいながらこのタフ&スマートなルックス。

焚き火にとどまらず、多彩な日々のシーンに映えること請け合いだ。 

MOUNTAIN BELAY COAT
マウンテンビレーコート」

US別注で作られた寒冷地仕様の
最高峰モデル。
 

続いては、ナンガの数あるラインアップの中でも最強のスペックを誇るダウンジャケットを。この「MOUNTAIN BELAY COAT マウンテンビレーコート」は、アメリカから別注を受けた特別な寒冷地仕様の1着。860(一般的には700で高品質とされる)フィルパワーのポーランド産ホワイトグースダウンを贅沢に封入し、比類なき防寒性能を確立した。

防寒面で最強のマウンテンビレーコート。寒冷地仕様のUS別注モデルだ。

高品質ダウンの恩恵を最大限に享受すべく、表面の生地には伸縮性のあるオーロラテックスを使う。さらにオーロラダウンジャケットと同じくラグランスリーブとすることで、優れた保温性と防風・防水性を担保しつつも、動きやすさを実現する。

二重構造のフロントが寒気の侵入を防ぐ。脇のベンチレーションは通気性を高める。

細部も最高峰に相応しい出来栄えだ。フロントジッパーはフラップが付いた二重構造で、寒風を見事にシャットアウト。フロントサイドにはハンドウォーマーが備えられ、脇部分のジップ式ベンチレーションは内部の温度や湿度の調整に一役買う。

開いてみても、高スペックは明らか。大型のメッシュポケットとパウダースカートを装備する。

また、コートを開いてみれば内側にも納得の仕掛けが。下部に付けられたスナップボタン式のパウダースカートが、体勢を問わず雪の侵入を防ぐ。これぞ、全天候&全方位型の隙なしダウン。言わずもがな、クールなビジュアルは街というフィールドでも活かされる。

「INNER DOWN CARDIGAN
DETACHABLE SLEEVE
インナーダウンカーディガン
デタッチャブルスリーブ

ダウンの可能性を広げる2WAYタイプ。 

ヘビーアウターの代名詞でもあるダウンウェアだが、これはひと味違う。「INNER DOWN CARDIGAN DETACHABLE SLEEVE インナーダウンカーディガンデタッチャブルスリーブ 」は、まさに名は体を表すカーディガンタイプ。インナーとしての汎用性が高いVネックの薄型ダウンで、デタッチャブルと謳うように取り外しが効く両袖もポイント。スナップボタン式の袖を外せば、Tシャツのように着用できる。

インナーダウンカーディガンデタッチャブルスリーブは、2WAYで楽しめるマルチアイテム。

薄手かつTシャツにも変形する2WAYアイテムとなると防寒性に疑問符がつきそうだが、そこは安心のナンガクォリティ。10デニールの生地がダウンを優しく包み込み、ハンドウォーマーや伸縮性の袖口が冷気を遮断するなど、寒さをまるで問題としない。軽い着心地は、まるで上質な羽毛布団のようだ。

両袖をスナップボタンで着脱可能。フロントのVネックが着回しの幅をさらに広げる。

しかも、表地素材にはリサイクルナイロンを、内側の羽毛にはリサイクルダウンをそれぞれ使用する。アウトドアスピリッツにも通じる、自然環境へのリスペクト。そんな心意気でも、ファンを魅了してやまない。

PORTABLE LIGHT DOWN MUFFLER
ポータブルライトダウンマフラー」

小物でも存在感は大物。
ダウン選びのファーストステップにも。 

 最後は、ウェアではなく小物をひとつ。上記の「インナーダウンカーディガンデタッチャブルスリーブ」と同じくリサイクル素材の表地&羽毛を採用した「PORTABLE LIGHT DOWN MUFFLER ポータブルライトダウンマフラー」を紹介しよう。

携帯にも便利なポータブルライトダウンマフラーは、ナンガの実力を体感するにうってつけ。

ダウンをマフラーにするというシンプルな発想が、ものの見事にハマった今作。薄手の生地特有の柔らかさは、首に巻く際の利便性にもつながっている。構造にも工夫が見られ、片方の端に設けられたループに通すだけの親切設計に。10×19cmのコンパクトサイズに収納できるパッカブル仕様もまた、ヘビーユースを促進する。

ループに通すだけで使えるうえ、コンパクトなパッカブルタイプ。

いずれにせよ、軽くて暖かいナンガの特長が十二分に表現されたアイテム。ダウンウェアと品質は変わらずとも、価格はリーズナブルに抑えられているのもうれしい。“本モノ”を知るためのファーストステップとして、リユースマーケットでお気に入りを探してみるのもおすすめだ。

以上、ナンガの代表的なダウンアイテムを5つ取り上げた。そのいずれもが、我々の背中を押す。扉を開けよう、自然と向き合おうと。折しも風向きは変わりつつある、今冬の寒風は我々を部屋に閉じ込めるだけでなく、外へと誘う。ならばなおさら、ナンガとともに行こう。

目的地はどこだっていい。そんなおおらかな気分にさせてくれるのも、頼れる“本モノ”の機能とデザインが傍にいてくれるから。特別な冬を、ぜひ満喫してほしい。 

 

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