FASHION

〜巡る時代をカルチャーと共に〜 〈リーボック〉の歩みも千里【後編(1990年〜)】

いつだって新たな一歩を踏み出す瞬間、我々の足元には相棒となるスニーカーがあった。数多ある選択肢、その中で今視線を向ける先は、“スニーカー”の実質的な元祖ともいわれているイギリス生まれのブランド〈Reebok リーボック〉。同ブランドが、巡る時代をカルチャーと共に歩んできた千里のハナシを、前・後編に分けて、歴史に名を残す名作ともに紐解いていく。

ランニングからフィットネスへとターゲットを広げ、独自進化を遂げた1980年代までのプロダクトを【前編】では紹介してきた。そして1990年代の幕開けと共に、リーボックは新たなフェーズへと進む。シューズ業界における急速な技術革新はハイテクスニーカーを生み出し、のちに“第一次スニーカーブーム”と呼ばれる新たなムーブメントを巻き起こしつつあった当時。リーボックもまたその一翼を担う存在として、シーンを活性化させる革新的プロダクトを次々と世に送り出していく。続くこの【後編】では、エポックメイキング作として語り継がれる1990年〜の名作をプレイバック。

「Ventilator ベンチレーター」
通気性に着目し“より軽量でより速く走れる”を追求。

序文でも述べたように、1990年以降スニーカー業界における技術革新は加速度的に早まっていく。特に顕著なのが、各社の最新テクノロジーがいち早く投入されるランニングカテゴリーであり、「Ventilator ベンチレーター」はその代表例。当時はまだシューズテクノロジーとして注力されていなかった通気性に着目し、“より軽量でより速く走れるプロダクト”を追求して誕生した。

リーボック_reebok_Ventilator_ベンチレーター_03

リーボック_reebok_Ventilator_ベンチレーター_02

通気性に着目し、軽さこそ速さであると証明するために誕生した「Ventilator ベンチレーター」。

アッパーサイドに備えられたウィンドウメッシュの優れた通気性と、新開発の軽量衝撃吸収素材「Hexalite ヘキサライト」を採用したソールにより、軽快な履き心地を実現。もう1点特徴的なのが、土踏まずのアーチ部分である。耐久性の高いTPUというプラスチックパーツにより、着地から蹴り出しの安定性が高められ、走行時のスムーズな足運びが可能に。“送風機”を意味するモデル名の通り、ランニングカテゴリーにおける〈Reebok リーボック〉の地位を大きく向上させる追い風となった。

リーボック_reebok_Ventilator_ベンチレーター_01

本モデルのコンセプトである“通気性”を視覚的に表現したアーチ部のプラスチックパーツ。

また、のちに人気ラッパーのケンドリック・ラマーがコラボモデルのベースに選んだことで、ストリートでも再注目されることに。写真は、デトロイトのスニーカーブティック「Burn Rubber バーン ラバー」がアレンジした別注モデルだ。1993年まで、カナダとミシガンの間に存在していたアミューズメントパークに渡るためのボートの配色をサンプリングしており、ポップな色合いがミッドテク期特有の凝ったパーツ使いを際立たせている。

「Pump Omni Zone II ポンプオムニゾーンII」
ポンプテクノロジーを全方位へと広めた立役者。

次なるモデルについて語る前に、時計の針を1989年に戻そう。この年、リーボックは画期的なバスケットボールシューズを市場に投入した。その名は「THE PUMP ザ・ポンプ」。最大の特徴は、シュータン上部に配されたバスケットボール型のコンプレッサーをポンプすることで、アッパー内部に設けられたチャンバー(空気室)に空気が注入され、足とのフィット感を増すという、これまでにないフィッティングシステムにあった。

だが、技術の進化は同時多発的に起きる。同年、〈NIKE ナイキ〉からも同じく空気圧によるフィッティングテクノロジーを搭載した「AIR PRESSURE エア・プレッシャー」が発売されたのだ。さらに映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』が公開され、近未来を描いた劇中シーンでは、自動フィッティングシステムを搭載した架空のシューズ「NIKE MAG ナイキマグ」も登場。世紀末に向かっていく時代背景の中で、俄然高まる未来的テクノロジーへの注目と憧憬。その中で突如現れた両ブランドの収斂進化は、スポーツシューズ業界に“フィッティング戦争”を勃発させる契機となった。だが結果は、アッパー全体(トゥ部分を除く)のフィット感を調節できるザ・ポンプに対し、エア・プレッシャーは足首部分のみだったため、リーボックが圧勝。かくして商業的成功を収めたポンプテクノロジーだったが、ウェアリングテストの結果、すべてのアスリートがアッパー全体のカスタムフィットを望んでいないことも判明。これを受けて、シュータン部分にのみチャンバーを配した“ミッドフットポンプ”が生まれる。1991年、コートに姿を現した「Pump Omni Zone II ポンプオムニゾーンII」にも、これが搭載されていた。

リーボック_reebok_Pump-Omni-Zone-II_ポンプオムニゾーンII_03

リーボック_reebok_Pump-Omni-Zone-II_ポンプオムニゾーンII_02

ミッドフットポンプでコストダウンに成功し、ストリートでも人気を博した「Pump Omni Zone II ポンプオムニゾーンII」。

リーボック_reebok_Pump-Omni-Zone-II_ポンプオムニゾーンII_01

シュータン部分にはバスケットボール型のコンプレッサーが。ポンピングするのもまた楽しい。

前後一体化させたミッドフットのサポートパーツと波打つTPUケージが相まって、前方から後方へと流れるようなデザインが印象深い本モデル。機能性を損なうことなくコストダウンに成功したことで、ストリートでも人気を博したが、ハイライトシーンを挙げるならば、同年のNBAオールスターのダンクコンテストに尽きる。ボストン・セルティックスのディー・ブラウンが着用し、自身の順番が回ってくるたび、儀式のようにポンプする姿が全米に生中継されたのだ。優勝を決めた彼の“目隠しダンク”と共に“ポンプ”は強烈な印象を残し、知名度とセールスも急速に上昇。以降、同テクノロジーはバスケットボール・コートを飛び出し、全方位(オムニ)にその勢力を拡大させていく。

(→「NIKE MAG」に関する特集記事は、こちら

「BEATNIK ビートニック」
ファッショニスタが愛した元祖コンフォートサンダル。

当時の日本は、バブル崩壊により宿泊施設に泊まらない経済的なレジャーとしてキャンプ・アウトドアがブームとなっていた。そんな最中の1993年、アウトドア用コンフォートサンダルとして登場したのが「BEATNIK ビートニック」である。センターシームの丸みのあるアッパーデザインに、リップルソール(シャークソール)をあしらい、甲部分とアンクル部分にはフィット感を調節するベルクロストラップを配備。

リーボック_reebok_BEATNIK_ビートニック_01

リーボック_reebok_BEATNIK_ビートニック_01

「BEATNIK ビートニック」は、丸みを帯びたサボタイプのアッパーデザインが印象的だった。

またKBMの過去記事でも触れているが、1950年代に若者たちの間で流行した「ビート・ジェネレーション(ビートニク)」との関係性も覚えておきたい。自由を生きがいとする彼らの思想はヒッピーとの親和性が高く、1990年代の裏原宿で花開くネオヒッピー的な文化とも合致。一説によると本作は、彼らが好みそうなモデルを想定して生み出されたとされる。

それまで野外活動時のサンダルといえばビーチサンダルか、〈テバ Teva〉に代表されるスポーツサンダルが主流だった中で、サボタイプの極めて独創的なデザインに感度の高いファッショニスタたちが脊髄反射。メディアで着用して物欲に火を着けるも、当時の日本ではインライン展開がなく、並行輸入で少量が持ち込まれたのみ。“注目されるもののモノはない”という需要と供給の悲しいアンバランスさが希少性を高め、地方在住者の憧れの的となった。また、現在でこそ広く浸透しているサンダル×ソックスの着こなしを普及させるハシリとなったのも本モデルであると言われている。その後、リクエストに応える形で復刻され、今日までリーボックを代表するコンフォートサンダルとして認知されている。

(→「ビート・ジェネレーション」に関する特集記事は、こちら
(→〈Reebok〉の「BEATNIK」に関する別の特集記事は、こちら

「INSTA PUMP FURY インスタポンプフューリー」
第1次ハイテクスニーカー・ブームを牽引した象徴的1足。

そして1994年3月、スニーカーの歴史にその名を刻むモデルがデビューを飾る。

シューレース自体を廃し、アッパー内部に納められていたブラッダー(空気室)自体をアッパーと一体化させることにで、名作「ザ・ポンプ」から更なる進化を遂げた「INSTA PUMP インスタポンプ」テクノロジーによるフィッティングシステム。蛍光色の鮮やかなイエローにレッド&ブラックという大胆なカラーパレット。軽量化のためミッドソールのアーチ部分を取っ払い、屈曲性も高めた前後分割型のスプリットソール。開発チームが掲げた“世の中に存在しないデザインを生み出す”という野心的なコンセプトを具現化したそれは、全てが前衛的なまでに斬新なアイデアで構築されていた。言わずと知れた大名跡「INSTA PUMP FURY インスタ ポンプフューリー」である。

リーボック_reebok_INSTA-PUMP-FURY_インスタポンプフューリー_03

リーボック_reebok_INSTA-PUMP-FURY_インスタポンプフューリー_03

「INSTA PUMP FURY インスタ ポンプフューリー」。大胆な配色は、アメリカのカスタムカー「ホットロッド」の炎のペイントから着想を得たもの。着用したランナーが炎に包まれているかのように見せる意図があった。

リーボック_reebok_INSTA-PUMP-FURY_インスタポンプフューリー_03

ヒールカウンターには、今ではお馴染みとなった「ベクターロゴ」が鎮座。サイドストライプとクロスチェックデザインをベースに作成された新たなアイコンとして、1992年に採用された。

かように前代未聞のデザインで注目を集める一方で、異質過ぎる存在としても見なされていたポンプフューリー。その証拠に、デビューした1994年のセールス状況は芳しくないものだったという。

転機が訪れたのは翌1995年。英国の人気カルチャー&エンタメ誌『cut カット』のカバーで、アイスランド出身の歌姫・ビョークが着用し話題に。これに負けるかと、ライバルブランドのナイキは、のちにその争奪戦が社会現象にまでなる「AIR MAX 95 エアマックス95」を電撃リリース。斬新なデザインとテクノロジーを搭載したライバルモデルとして、当時人気のストリート雑誌『BOON!』などで取り上げられたことで両モデルともに人気爆発。激しい争奪戦のターゲットとなり、その名を広めていった。

リーボック_reebok_INSTA-PUMP-FURY_インスタポンプフューリー_NIKE-ナイキ_AIRMAX95_01

〈NIKE ナイキ〉の「AIR MAX 95 エアマックス95」の通称“イエローグラデ”。 ポンプフューリーとともにハイテクスニーカー・ブームを牽引した。

ただ、この斬新なカラーリングが我々の前に姿を現すまでには、紆余曲折もあった模様。当時の営業・マーケティング部門が「奇抜すぎる」としてネガティブな反応を示して発売に反対したのだ。これに納得のいかなかったデザイナーはCEOへ直談判。結果、イエローとレッドを大胆に用いた“シトロン”が1stカラーとして発売されることに。エアロスミスのスティーブン・タイラーといったミュージシャン、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンクといったファッションデザイナーらがその唯一無二なデザインに注目し、公私問わず着用。その姿を見た反対派は、さぞや悔しがったことだろう。

さて、そんな初代ポンプフューリーだが、実は2タイプが存在するのをご存知か。そのうち今回紹介するのは「プロトモデル」と呼ばれるもの。アウトソールのフォアフット部分に、シトロンカラーのラバーパネルを使用していたのだが、柔らかくソールも劣化しやすいという問題点が判明し、発売から半年後には、耐久性に優れたブラックのラバーソールへと変更がなされた。加えて、いくつかのディテールもマイナーチェンジして再発売され、現在はこの仕様が「INSTAPUMP FURY OG インスタポンプフューリー オリジナル」として認識されている。

リーボック_reebok_DMX10-01

写真は2019年3月に全世界1994足限定で復刻されたもの。アウトソールのフォアフット部分のシトロンカラーもしっかり再現されている。

また、その足元を文字通り支える「HEXALITE ヘキサライト」への言及も忘れてはならない。〈NASA ナサ〉とも高性能素材を開発していた〈HEXCEL ヘクセル〉社とリーボックが1990年に共同開発した、このハニカム構造(蜂の巣構造)の衝撃吸収システムは、自然界で最も安定した構造と考えられる六角形(ヘキサゴン)を繋ぎ合わせることにより、多方面からの衝撃を効率的に分散。従来のEVAミッドソールの約4倍の衝撃吸収力を実現しているという。本モデルでは、アウトソールのサイドと真下から目視可能だ。

(→「INSTA PUMP FURY」に関する別の特集記事は、こちら
(→〈NIKE〉の「AIR MAX95」に関する特集記事は、こちら

「INSTA PUMP FURY インスタポンプフューリー 第2世代」
デビュー9ヶ月後という早すぎるアップグレードは人気の証左。

同年末、デザインの核となる外装面を中心に最初のアップグレードが行われ、早くも第2世代のポンプフューリーが誕生した。

リーボック_reebok_INSTA-PUMP-FURY_インスタポンプフューリー_第2世代-03

リーボック_reebok_INSTA-PUMP-FURY_インスタポンプフューリー_第2世代-02

主に外装部分にアップデートがなされた「INSTA PUMP FURY インスタポンプフューリー第2世代」。

アウトソールとヒールクリップをアップデートし、トゥに三角形の3M反射パネルを搭載。ミッドソールのエッジ部分は、より柔らかなラインを描くようになり、ヘキサライトのハニカムパターンに代わって紙吹雪のような粒子がデザインされた。構造面では、中央のスプリットソールも若干ではあるが短縮。それ以上に大きな変更点だったのがシュータン部分は、存在感を放つダイアモンド型のプルタブに変更されたが、数シーズンでオリジナルに戻された。これは肝心のブランドロゴにかかって、文字が見えづらくなっていたからだと推察される。

リーボック_reebok_INSTA-PUMP-FURY_インスタポンプフューリー_第2世代-01

左からプロト、OG、第2世代を並べてみた。その違いがお分かりいただけるだろうか?

こうしてポンプフューリーはリーボックの象徴的モデルとしての地位を固め、これに呼応するかのように、我が国におけるハイテクスニーカー・ブームは、更なる熱を帯びていくのであった。

「QUESTION MID クエスチョン ミッド」
未来のNBAスターを支えた初シグネチャーモデル。

“リーボック=ポンプテクノロジー”という図式が広く周知されてきた1996年、バスケットボール・コートでは新たなヒーローがデビューを果たす。のちにNBA選手としては小柄ながら、4度の得点王に輝いたアレン・アイバーソンその人である。リーボックは、ルーキーイヤーの1996年から彼と契約を結んでいたものの、周囲から挙がってくるのは活躍を疑問視する声。この状況を逆手にとって、彼の初シグネチャーモデルには「QUESTION クエスチョン」というウィットに富んだ名が付けられた。まさに当意即妙。

リーボック_reebok_QUESTION-MID_クエスチョン-ミッド-02

リーボック_reebok_QUESTION-MID_クエスチョン-ミッド-01

「QUESTION MID クエスチョン ミッド」は、 NBA選手アレン・アイバーソンのシグネチャーモデルとして誕生。

しかし当のアイバーソン本人は周囲の不安など、どこ吹く風。ソールにヘキサライトを搭載したこの相棒とともに切り裂くようなクロスオーバーを武器に素晴らしい成績を収め、新人王のタイトル獲得という最高の答えを返した。これにより第2弾以降のモデルは「ANSWER アンサー」に変更され、独自のコートファッションとともに支持率急上昇。14弾までリリースされる人気シリーズとなった。

ここで紹介するのは「RESPECT MY SHINE リスペクト マイ シャイン」と名付けられた復刻版。何やら既視感を覚える配色は、マイケル・ジョーダンを敬愛する彼が大学時代に履いていた、ナイキの「AIR JORDAN 11 CONCORD エアジョーダン11 コンコルド」に由来。履き込むほどにゴールドの下地が覗く二重構造のトゥには、アイバーソンの輝かしいキャリアへのリスペクトの念が込められている。

「DMX10」
クッショニングテクロジーのビジュアル化に成功。

【前編】で紹介したガーメントレザー、ポンプテクノロジーとこれまでフィッティングにおいては、トップアスリートからも高評価を得ていたリーボック。一方で、クッションニング性能が一般ユーザーには伝わりづらいという声も多く聞かれた。そんなイメージを払拭することに成功したのが、1997年に発表された「DMX10テクノロジー」と、それを採用した本モデルである。DMXとは“ダイナミッククッショニング”の略で、リーボック独自のムービングエアテクノロジーによる衝撃吸収反発システムを指す。

リーボック_reebok_DMX10-01

リーボック_reebok_DMX10-01

クッショニング性能の視覚化に成功し、ファッションギアとして注目された「DMX10」。

最大の特徴は、ソールに搭載された「エアポッド」。足が地面に着くたびにエアポッド内の空気が圧縮され、ソール内の異なるゾーンに移動することで、優れた安定性とクッション性を生み出すのである。1997年といえば、ナイキからフルレングスビジブルエアユニットを初搭載した「AIR MAX 97 エアマックス 97」も登場し、いまだハイテクスニーカー全盛期。随所に施されたリフレクター素材やアッパーと一体化したシュータン、そしてユニークなソール。これらのフューチャリスティックな意匠を備えた斬新なルックスは、多くのファンに愛された。

今は亡き天才デザイナーのアレクサンダー・マックイーンもその1人だ。ランウェイの最後を飾る場面で、彼の足元に履かれたオリジナルカラーのDMX10は、ハイテクスニーカーとモードファッションの親和性を改めて証明するグッドサンプルとなり、それまで同社を代表するクッショニングテクノロジーに君臨していたヘキサライトの地位は、DMXへと譲位されていくのであった。

「3D OPUS 3Dオーパス」
“超軽量化”こそが、速さを追求した結果の最適解。

90年代初頭から続いてきた、熱狂的なまでのハイテクスニーカー・ブームも徐々に落ち着いてきた1998年。「3D OPUS 3Dオーパス」は、光沢感溢れるエメラルドグリーンのパテントレザーと通気性に優れたメッシュ素材で構築されたアッパーで注目を集めたランニングシューズの佳作。ブランド創設者のJ.W.(ジョセフ・ウイリアム)フォスターが追い求めた、「どうしたらもっと速く走れるのか?」という命題に対し“超軽量化”というコンセプトをもって挑んだのである。

リーボック_reebok_3D-OPUS-3Dオーパス_02

リーボック_reebok_3D-OPUS-3Dオーパス_01

「3D OPUS 3Dオーパス」の最大のポイントが、軽量かつクッション性に優れた3Dウルトラソールの存在。

軽量化のためソックライナーを取り外して、ストラップや補強パーツと連動させたシューレースシステムを搭載。さらに足裏全体に耐久性に優れたグラファライト製プレートを敷き、ミッドソール&アウトソールの役割を果たす「3D ULTRALITE SOLE 3Dウルトラソール」を合体。余分なパーツを削ぎ落した独特な形状ながら、高い安定性と抜群の屈曲性、そしてクッション性を兼ね備えたこのハイテクモデルが我々に示したコンセプトは、新世紀へと向かっていくリーボックにとって進化の指標ともなった。

「ZIGPULSE ジグパルス」
ジグザグソールが衝撃を推進力に変換し、さらに前へ。

時代は2000年代に突入。好敵手ナイキは、新たに「SHOX ショックス」を発表するなど、伝家の宝刀であるエア クッショニングシステムを進化させて、先進的なビジュアル&キャッチーなテクノロジーを具現化させていく。リーボックも後塵を拝したものの、この動きを傍観してはいられない。対抗する形で2009年に新たなクッションテクノロジー「ZIGTECH ジグテック」を発表。これを搭載し、同年にリリースされたのがランニングシューズ「ZIG ジグ」であり、その復刻版が今回ご紹介の「ZIGPULSE ジグパルス」。だ。のちに“ドーピングシューズ”とも称され、某マラソン大会では着用禁止も言い渡された本モデルのポイントは、ジグテックの根幹たる奇妙なソールデザインにある。

リーボック_reebok_ZIGPULSE-ジグパルス_02

リーボック_reebok_ZIGPULSE-ジグパルス_01

ジグザグ状のソールが目を引くランニングシューズ「ZIGPULSE ジグパルス」。

ジグザグ状に成型したEVA素材が着地時の衝撃を吸収して推進力に変換する(要は、バネを横に倒したようなもの)この奇天烈なソールには、極めて高い屈曲性を確保できるというメリットもあった。前述したドーピングシューズの一件を逆手にとったCMでも話題となったが、一説にはリーボックが話題作りのプロモーションのため、自ら使用禁止を願い出たとも…。何はともあれ、これまで培われてきたデザインの革新性と機能性を視覚的にアピールするという技術を推進力に変えながら、更なる高みを目指していく。

「ATV19」
ソールが奇妙すぎる、全地形対応型ランニングシューズ。

慣れとは怖いもので、いかに最高点を叩き出そうとも「もっともっと」と常に更新を求めがち。こと近年のスニーカー業界における独創性に関しても然り。これまでデザインと機能性を融合させた革新的スニーカーを市場に送り出し続けてきたリーボックだけに、ファンの求めるレベルも青天井となっていたのだろう。本稿のラストを飾る「AVT19」の姿を見てもらえれば、この言葉の意味もご理解いただけるかと。

リーボック_reebok_ATV19-02

リーボック_reebok_ATV19-02

“あらゆる路面を走行可能”という「ATV19」のコンセプトは、のちのトレイルランニング人気を予見したかのよう。

2013年に登場した本モデルのデザインモチーフは、あらゆる路面で走行可能な車両「ATV(ALL TERRAIN VEHICLE)」とされる。一般的には四輪バギーなどを指すが、デザインから想起されるのは、カナダ製の水陸両用8輪マルチ駆動ビークル「ARGO アーゴ」。自然環境の厳しい彼の地が生んだ荒地走破能力を、アウトソールに並んだ19個の突起で再現したのでは?と考えられる。

リーボック_reebok_ATV19-01

足裏に並んだのは、19個にも及ぶ突起。名は体を表すとは、まさにこのこと。

その奇妙なルックスから一部ではタコ足やイモ虫とも揶揄された突起は、各々があらゆる地形を捉え、しっかりグリップするように傾斜角度が計算されているとのこと。これにより路面状況を意に介することなく駆け抜けることが可能。見た目で侮ることなかれ。リーボックが追求してきた機能性の視覚的表現は、このモデルで1つの頂点に達した。今回用意したのは、初代とは微妙にアッパーのデザインが異なる「ATV19 ULTIMATE」だが、ソール自体に変わりはないので足裏にのみ注視いただければ幸いだ。

リーボック_reebok_pc

そういえば、ヒップホップダンスには「Reebok リーボック」という基本ステップが存在する。マーチングバンドからインスピレーションを得たというこのステップの名称は、革新的テクロジーを搭載し、スニーカーの歴史に一石を投じた名作「ザ・ポンプ」に由来するそうだ。

ポイントとなっているのが、ノックするような手の動き。そう、常に新たな時代の扉を叩きながら前進し続けるのがリーボックなのである。“世の中に存在しないデザインを生み出す”という純粋な想いをポンプアクションで時代にフィットさせ、そして同時に推進力と跳躍力に変えながら、ひたすら高みを目指していくのだ。今までも、そしてこれからも。

(→【前編(〜1989年)】は、こちら

ONLINE STORE
掲載商品は、代表的な商品例です。入れ違いにより販売が終了している場合があります。