その評判はホンモノ! 〈ワイルドシングス〉定番人気モデル【前編】 ハッピージャケット、デナリジャケット他
だが、布団にくるまってばかりはいられない。いざ街へ、山へ、冬の寒さに負けず。丈夫なカラダとココロを持ち、遊びに出よう。
となれば、まずは周到な身支度から。強い気持ちで前を向くには、強きアウターこそが相応しい。例えば〈WILD THINGS ワイルドシングス〉。ファッションアディクト、アウトドアラバー、ミリタリーフリークの3方から評判高きUSブランドは、屈強なスペックで冷気をしなやかに蹴散らす。その迫力、まさに冬眠を知らない“野生”の如し。
〈WILD THINGS
ワイルドシングス〉とは?
登山家夫婦によって育まれ、
ミリタリーフィールドで花開いた
ブランドの歴史
ここからは【前・後編】に分けて〈WILD THINGS ワイルドシングス〉の傑作アウターを紹介していく。が、その前に。恒例のプレーバックにお付き合いいただきたい。アウトドア生まれ、ミルスペック育ち。ブランドの歴史を端的に示すなら、そういうことになる。
誕生は1981年。カナダ国境に近いアメリカ東部のニューハンプシャー州ノースコンウェイにて、ひと組の男女によって創設された。スイスのシャモニーでマウンテンガイドを続ける一家に生まれたマリー‧ミューニエールと、アメリカ人のジョン・ボチャード。ともに登山家のふたりは、のちに婚姻関係を結んでいる。
自らの知恵と経験を活かし、容赦なき自然と触れ合う。ふたりが手がけるアイテムは必然的に、プロフェッショナルな登山ウェア&ギアだった。プロダクトコンセプトは、「軽くてタフでなければいけない」。事実、1985年のブランドカタログには「Lightest is Rightest!(最軽量がもっとも正しい!)」「Weight is enemy(重さは敵だ)」と記されていたという。
もっとも、その優れた機能性が大きく知られるようになったのは1984年から。ブランドを立ち上げ、3年が経過した頃だ。この年、創業者のひとりであるマリーが女性で初めてアンデス山脈最高峰アコンカグア登頂に成功。自身が手掛ける登山用品の有用性を歴史的快挙で示したことで、ワイルドシングスはクライマーの憧れへと駆け上ったのだ。
名声は、さらなる誉を呼ぶ。1985年に入ると、アメリカ軍へのギアとウェアの納品を開始。アウトドアで培ったハイスペックは、同じく過酷なフィールドである戦場においても高評価を獲得した。以降はアウトドアとミリタリーの両輪を軸に成長を続け、積極的に新たな素材・アイデアを採用し続けている。
近年では米国軍の正式サプライヤーに認定され、2010年に革新的ミリタリーライン〈WILD THINGS TACTICAL ワイルドシングスタクティカル〉もスタート。幅広くラインアップした防寒性能と機動力を同時に追求するアウターは、山で戦地で、そして寒さが支配する冬の街でも圧倒的支持を得る。
〈WILD THINGS ワイルドシングス〉
人気モデル①
「HAPPY JACKET
ハッピージャケット」とは?
類い稀なる防寒性能で、
過酷な戦場にもスマイルを。
それでは本題。トップクライマーの叡智とミリタリー由来のタフネスが凝縮した名品のなかで、トップバッターを飾るのは今最も注目度の高いアイテム。その名も「HAPPY JACKET ハッピージャケット」である。
一見シンプルなアウターは、随所に優れた機能性を隠す。例えば、特徴的なスタンドカラーにはベルクロ式のポケットが取り付けられ、その内部にフードを収納。絶妙な光沢を湛えるナイロンの表地には撥水加工を施し、多少の雨を弾くとともに水洗いを可能にした。
収納力も抜群だ。ハの字型の大きなサイドポケットは上下どちらからも開閉できるダブルジップ仕様で、ジャケットの内側にも大型のポケットが付属。他のディテールも秀逸で、磨耗しがちな肘から袖口にかけてはしっかりと補強パッチが付き、ベルクロで調整可能な袖口は冷気の侵入をシャットアウトしてくれる。
そして最大のポイントが、インサレーションに秘められている。ナイロンボディの内部に、ダウンではなく「PLIMALOFT プリマロフト®」を抜擢したのだ。保温性・軽量性・柔軟性・撥水性・通気性……、いくつものメリットを持つ画期的な超微細マイクロファイバー素材製の人工羽毛は、アメリカ軍の要請を受けた「ALBANY社」によって開発されたもの。理想的な中綿で、前述の「Lightest is Rightest!」をより力強く宣言した格好だ。
ちなみに、「ハッピージャケット」という名前は寒冷期に温もりという幸運を呼ぶことから名付けられた訳ではない。実は今作が、かつてワイルドシングスがアメリカ海兵隊のために納入していた通称「ハッピースーツ」のタウンユースモデルであることに由来している。
なお、ハッピースーツもあくまでニックネームであり、正式名称は「Parka, Extreme Cold Weather」だ。ハッピーと呼ばれる理由は、初期モデルのタグにミリタリーウェウアには不釣り合いなスマイルマークが描かれていたから。その辺りの話も含め、ハッピースーツについては続く【後編】にてじっくり解説しよう。
(→〈ワイルドシングス〉の「ハッピージャケット」をオンラインストアで探す)
〈WILD THINGS ワイルドシングス〉
人気モデル②
「DENALI JACKET
デナリジャケット」とは?
トップクライマーの矜持が宿る、
名刺代わりの傑作。
続いては、創業者のマリーがアコンカグアの頂を制覇する以前のモデル。1983年にデビューを飾ったロングセラー「DENALI JACKET デナリジャケット」を紐解いていこう。
今年で誕生30周年を迎えるメモリアルアウターは、ブランドを創業当初から支える遺伝子的渾身作。プロクライマー用の防寒ジャケットとしてリリースされ、現場の意見を反映してマイナーチェンジを繰り返しながらも、主たるデザインはほとんど変わっていない。生まれながらにして高い完成度を誇っていたのだ。
首元まですっぽりと覆う大振りのフード、可能域の広いラグランスリーブ、アクセスしやすいフロントポケットなど、実用的ディテールはルックスのアクセントにも直結する。さらに今作は、プリマロフトをいち早く中綿に採用したモデル。そのため、ワイルドシングスの先見性を象徴する傑作としても名高い。
今回紹介するのは、2018年の秋冬にリリースされたレアモデル。表地には透湿・防水性に秀でた3レイヤー設計の「e Vent」を使い、中綿には当然ながらプリマロフトを組み込んでいる。そのうえで、プリマロフト入りのライナーがファスナーによって着脱可能に。つまりはライナー単体、ライナー有り無しの計3パターンに変形し、シーズンをまたいだ着用を叶えるのだ。
しかもライナーのジャケットの表地が、合体時の裏地となるユニークな構造を取る。ゆえに、ライナーを付けて着た際に内ポケットとして機能した収納は、ライナー単体時には外ポケットとして機能する。こんなにも物欲をくすぐるギミックが、なぜ今は排除されてしまったのか。忸怩たる想いを原動力に、ぜひリユースマーケットで掘り当てていただきたい。
(→〈ワイルドシングス〉の「デナリジャケット」をオンラインストアで探す)
〈WILD THINGS ワイルドシングス〉
人気モデル③
「CHAMONIX JACKET
シャモニージャケット」とは?
軽さ至上主義を体現する
中綿レスの本格派。
アラスカ先住民の言語で「偉大なもの、偉大な存在」を意味するというデナリ。その名を冠したデナリジャケットの派生モデルとして、‘90年代に生を受けたのがこの「CHAMONIX JACKET シャモニージャケット」だ。フロントを斜めに走るバイアスポケットに、元ネタの名残を見ることができる。
余談だが、シャモニーとはモンブランの麓に位置するフランス南西部の地名。記念すべき第一回冬季オリンピックの開催地にも選ばれた由緒正しき場所で、登山とスキーが盛んなリゾート地としても人気だ。
閑話休題。デナリジャケットと異なる今作の特徴はずばり、さらなる軽量化にある。プリマロフトの中綿を取り除き、ミニマルなシェルとして再設計。ボディ素材にも軽快さを求め、よりソフトで軽量なナイロン素材が使われた。
薄手で軽く、インナー自在で使い勝手抜群な名作は、肩の切り替えデザイン、通称ブラックショルダーもまたアイコニック。はるばるフランスまでとは行かずとも、携帯も着脱も気軽な1着は、旅の相棒にもうってつけだろう。
一方で、高いユーティリティ性とグッドセンスなレトロデザインが現在のファッショントレンドに合致してか、ヴィンテージ市場での価値は高騰。見つけた時が買い時だ。
(→〈ワイルドシングス〉の「シャモニージャケット」をオンラインストアで探す)
〈WILD THINGS ワイルドシングス〉
人気モデル④
「MONSTER PARKA
モンスターパーカー」とは?
ミリタリー界の“ホンモノ”は、
名実ともに怪物級。
名前からして、すでに只者にあらず。モンスターの呼び名にそぐわぬ圧巻スペックの超人気作を持って、前編を締めくくりたい。デナリジャケットとシャモニージャケットをトレッキングウェアの最高峰とするならば、「MONSTER PARKA モンスターパーカー」はミリタリーアウターの最強モデルに違いない。
そもそもモンスターパーカーとは、米国特殊作戦軍(United States Special Operations Forces = SOF)が着るアウターの通称。そこには一般兵士用の「Extended Cold Weather Clothing System(拡張式寒冷地被覆システム) =ECWCS(エクワックス)」以上にハイスペックな「PROTECTIVE COMBAT UNIFORM=PCU」なるシステムが採用されている。
ECWCSとPCUはどちらも7段階に分かれたレイヤリングを基本とするなかで、モンスターパーカーはPCUのレベル7に該当。重ね着の一番外側を担当し、なんと-40℃もの極寒地での活動にまで対応してしまうらしい。
内側には大きなメッシュポケットを装備。後ろ身頃の長い独特なシルエットがアイコニックだ。
そんな図抜けた防寒性能のほか、極端なビッグシルエットもモンスターパーカーの魅力だ。なにせ、バックパックを背負ったままでも着用できるように設計されているのだから。フロントよりバックの身頃が長いデザインも、そんな理由に基づいている。
ここで紹介するのは、タウンユースを睨んでやや造形がスマートになった2022年のモデル。とはいえたっぷりしたサイジングは健在で、フードを内蔵したスタンドカラーなどタクティカルなディテールが多数詰め込まれた。
とりわけ頼もしいのが、「CLIMASHIELD PRISM クライマシールドプリズム」を使ったインサレーションだろう。プリマロフトに続く次世代の中綿として米軍に採用されるハイテク素材は、軽く、強く、たとえ濡れた状態であっても温かさを保持できる。もはや無敵だ。
最後に一点。前出のハッピースーツが最初期ECWCSのレベル7として米軍に採用されたのに対し、ワイルドシングスのモンスターパーカーでは納入の実績はない。これまで正式に米軍納入が果たされたのは、セクリ社とオーク社(ブランド名はビヨンド)が製造したものだけだ。
とはいえ、我々がプライベートをエンジョイするには十二分なオーバースペック。ワイルドシングスのタクティカルウェアは、紛れもなく“ホンモノ”なのである。
ワイルドシングスのアウターを知る。途端、寒さが恋しくなる。健全でたくましいそんなマインドがあれば、これから先も心配はいらない。筋骨隆々のクライマーやソルジャーでなくたって、目の前の壁をきっと超えられるはずだ。
次回、【後編】では例のハッピースーツのほかに人気ブランドとのコラボレーションモデルも紹介。それではしばし、実りある休戦を。